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夜明けのすべての香港のレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
3.6
恋愛映画になる状況と俳優を揃えて、恋愛映画になるのを見事に避けていく。セオリー通りならここで展開するであろう場面で、何も展開しない。そしてそれは必ずしも友情であるとも言い切れない。その名状し難い関係を描いたという意味で非常にユニークな映画だと思う。

気の利いた撮影も、山添が自前のブルーのカーディガンから白の作業着に変わっていくグラデーションの使い方も、主演含めたキャスティングも(足立智充の中小企業顔は本当に見事だ。『夜を走る』でもそうだったけど。というか彼が出てて、グループセラピーのシーンが出てくるので、この後変な踊りをするんじゃないかと一瞬ドキドキした)、子供リテラシーの高さも(渋川清彦の息子のリアリティと、特に説明もされない取材に来てる彼。だってその辺に普通にいるんだから特に何も説明しない、は三宅唱のスタンダードなのだろうし、それは全く正しい)、出演者が泣く劇中で唯一のシーンのタイミングと撮り方も(これは本当に見事だと思う)、映画として本当によく出来ていてちゃんと完成度が高い優れた作品だと思う。

ただ、その端正な作品の佇まいにあって、山添からわざわざ語られる男女の友情の話と、ラストの藤沢さんについてのモノローグは全くの蛇足だと思う。それを言わなくてももう十分画面が語っているのだから。

それと同じ曲が何度も流れる劇伴なのだけど、その曲があまり好みではなかった。過去作もそう思ったので、多分俺と三宅唱は音楽の趣味が合わないのだと思う。
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