ろくちゃん

夜明けのすべてのろくちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

16ミリフィルムで写し出される淡く優しい光のように、うまく生きられない人々の人間模様を描いた作品。

上白石さんはPMSに悩み、松村さんはパニック障害に苦しんでいる。
しかし、だからといって自己憐憫に陥ることなく、しかし病と闘っていることは確かに理解できる。
この絶妙なバランスが素晴らしい作品だった。

2人が接近した後半からに「僕パニック障害なんで」といっておどけてみせるシーンがある。これが、恐らく同じ病気の当事者にも嫌悪感を抱かせない、絶妙なやりとりになっている。
そこに至る過程を丁寧に描き、かつ、ひとつひとつのシーンでその人の人となりがわかる挙動を蓄積しているからだろう。

なかなか難しいテーマを本当に爽やかに描いてみせる手腕に脱帽。

冒頭のナレーションが少し長いかなぁと感じたが、複雑なテーマゆえに致し方なしか。

また、本来はそこにない虚像を通じ出す点で、本作がプラネタリウムを通して映画作りをも描いており、さらに実際にフィルムを作ろうとしている学生も出てくる。
非常に重層的で噛み締め甲斐のある作品でした。