Kapporiya49

夜明けのすべてのKapporiya49のレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.8
観賞直前までに原作をAudibleで聴き終えたのだが、これほどまでにシンプルで地味なお話をどう映画にするってのよ?と思いつつ、きっと三宅唄監督なのでやってくれるはず!と期待しつつ観た。

原作にはなかった要素や脚色が絶妙で、非常に映画的なアレンジが成されていて素晴らしい。

原作では、釘などの金属製品をホームセンターなどに卸す栗田金属がプラネタリウムや顕微鏡を作る栗田科学という会社に代わり、山添くんは彼女や元上司と関係が続いている。

惑星が付かず離れずで互いに影響し合いながら周っている、直接は関係ないはずの星たちが星座を形づくる、そして長い時間を経てこの星星は何ごともなかったかのように離れ離れになることもある。
これらが主役の周辺にいる人たちが支え合いすれ違っていることのアナロジーになっていて、脚色の追加が天才か!と思った。

さらにこのアナロジーを象徴する夜の闇と星や街や太陽が16mmフィルムの淡い映像と相まって、見事に映画館で観るべき映画として完璧に仕上がっている。
気のせいなのかどうか分からないけど、終盤に向かうに従ってどんどん陽の光が温かそうに感じた。

ストーリーとしての味わいは原作と大きく違いがないにも関わらず、映画になるんかなと思わされた原作がここまで映画として昇華されるとは想像もしなかった。
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