ヤマ

夜明けのすべてのヤマのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
3.5
月に一度、PMSでイライラが抑えられなくなる藤沢さんは、ある日些細なことで同僚の山添くんに怒りを爆発させてしまう。しかし無気力に見えた山添くんもまたパニック障害を抱えていることを知り、ふたりは徐々に互いをわかり合っていく。

ときに感情を爆発させる藤沢さんに無愛想で頑なな雰囲気の山添くん。主演二人のいかにも身近にいそうな自然な佇まいが見事で、作品の要となっているように思う。細やかな情景描写を通じたふたりの変化とやがて共鳴する瞬間には尊さが芽生える。16ミリフィルム撮影の温もりある映像も印象的。

それぞれが抱える生きづらさは長い夜にたとえられ、劇中でふたりが手掛けたプラネタリウムの輝く星は暗闇の中の希望になぞらえられる。そういえば映画も似たようなものかもしれない。観終わった時には、何か世界の見え方が少し変わって解像度がわずかに上がったような気がする作品。
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