ツクヨミ

夜明けのすべてのツクヨミのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.0
人の暖かみをフィルムで捉えることの素晴らしさよ。
三宅唱監督作品。前作"ケイコ目を澄ませて"が良かったので、監督新作を見に行ってみた。
まずオープニング、モノローグの語り口で精神疾患を持つ女性の話が語られる。生理前にどうしようもなくイライラしてしまい問題を起こしてしまう生きづらさがわかりやすく演出、そんな女性が見つけた小さな職場での話という入りやすい始まりだ。
まあ今作はそんな生きづらさを抱えた女性と、同じ職場で同じく生きづらさを抱えた男性との心の交流を描いたものになっている。厳密には違うが生きづらさを抱えているのは共通、人の痛みを理解し得るから近づくことができる二人の時間が優しく映像に現出する素晴らしさよ。前作に続き三宅監督がフィルム撮影によって捉える奇跡の温もりあるショットにジーンと心暖まるようだ。
だがしかし今作が語るのはそんな二人の交流だけではない、生きづらさを抱え燻っていた二人の人生がゆっくり好転していく展開のほうがメインと言うべきか。問題の解決策とはいかないが問題を軟化させることにより、他の問題に対処できたり見えなかったものが見えてくる、そんな小さな希望が灯る温かな未来が見えるラストもまたすごく良い。
あとは三宅唱監督っぽい街を映したショットがたまに入る感じ、相変わらずハッとする日常の素晴らしさが見えてくる。やっぱりフィルム撮影で切り取られる日常の景色を撮りたい人なんだなと改めて感じた。夜と昼で形を変える表情、だがいつでも暖かな温もりを感じる三宅監督の作品にどっぷり浸かれた。
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