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夜明けのすべてのCのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
3.8
舞台が自分のいる位置と遠ければ遠いほど加点法で観るようになるし、近ければ減点法で観てしまう。何十年も前のフランスで撮られた映画で、自分でも言語化しにくい感情が描かれていたら、他にどんな破綻があってもそれだけで強く感動するけど、現代・日本を舞台に自己投影しやすい人物造形で展開されると、細かなところがノイズになってしまう。

この映画において(というか三宅唱の映画において)は、鑑賞を邪魔するノイズがほとんどなかった。「そうなるだろう」ことを積み上げる形でドラマが進む。観せ方も、見映えのためだけに関係性をウェットにしないし、感傷のためだけに流れを止めてキャラを掘り下げるようなこともしないから信頼がおける。

ただ、2人の主人公の帰結については個人的に少しフラストレーションが溜まる部分があった。山添は栗田科学がどんなに居心地が良くても「ここにとどまるべきじゃない」っていつまでも思っていてほしいし、藤沢も介護っていう事情で押し動かされただけっていう後ろめたさを感じていてほしい。オールオッケーで柔和な笑顔を浮かべるには早くって、マイナスがゼロに戻ったなら、もう一回欲や苛立ちを思い出してほしい。

まあでも、エンディングでそんな含みをもたせる必要もないし、これはこれで一つの形として当然あっても良いのだけど。
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