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夜明けのすべてのharukaのネタバレレビュー・内容・結末

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

2024年の世の中の空気をとても機敏に感じて落としている映画。
この映画から希望を感じるけど、同時にこの映画が作られない世界になればいいとも思う。


まず、冒頭からPMSだとか、生理だとか女性特有の症状について語られることがまず、そんなことが映画で、しかも全国放映のtohoシネマズで行われることが新しくもあり、やっとここまで世の中の流れが変わったのだと感じて泣きそうになった。

この映画が集客の見込める座組みでできているのもすごい
PMSの辛さなど人にもよる。薬の飲めない、飲めるものそれぞれ。
でも、自分ではない痛みが写っているけれど、自分のものだった可能性を一回でも考えたことがある痛み、辛さはみているだけで苦しくなった。

強くあれ。弱さ出すな。働いたら一人前。金を稼ぐことが仕事。
長い間、これらのイメージが付与されていた男性性がパニック障害を負うこと。
病気の苦しみ、そこへの対峙、それによる人間関係、社会生活の変化。そういうものが映画で表象されること。
それもとても画期的だった。

2人がお互いの持っているものについていうカット。
向かい合った二人を横ショットからじっと取っているのがとても良かった
カットバックしてない。だからこそリアルな緊張感、間。鍵を置いたのも良かった

インタビューより

二人がやりとりしているということのリアルを撮りたかった。二人の“間”は、たとえばカットバックで撮影すれば後から編集でいくらでも捏造できてしまうものですけど、そうではなくて、二人をそのまま産地直送したかった。

まさにこれ!


弟の仏壇に手を合わせて祈るシーン
祈る最中、徐々に静寂にひいていくカメラ。少しずつ海の音みたいなノイズが聞こえてきて、プラネタリウムに移る。


自転車で走り出すシーン
フレアが大きく画面いっぱいに広がって明るく背中を包むような。希望をとても感じる演出

それまで、自分の脚で行ける範囲しか行動出来なかった山添が、もらった自転車があったからこそ踏み出せた一歩。とても大きな一歩


蓋を開けてあげたり、自転車を届けたり、外に連れ出してあげたり。
心配するけど干渉はしない
あの行動に名前をつけられないけど、あんな優しさを持ち合わせたい、
難しい


常に気を遣われる対象として描かない

症状が発症しているときはもちろん辛い、
常にその病気を傍に生きている。けどそれだけじゃない。常に気を遣われる対象ではないと描いているのがいい。

人に気を遣えたり(使いすぎてるけど)、お節介だったり、病気のことも含めて冗談を言い合ったり、仕事をしたり、話したり。
何面にもある人間の顔。時々でする表情

髪を切るシーンは最高。
その前まで、2人のが抱えるものが見えてきて、そこへのアプローチに少し緊張していた。
でも、病気のことは病気のことであるけれど、それだけが2人を構成するものではないと伝えてくるシーンだった。

冷たく見えた山添くんも以外と大失敗を笑って受け入れてたり

人にとても気を使う藤澤さんもすげー大胆なところがあったり。

抱えているものとは直結しない2人の人間性の部分が見えたことで、キャラクターの厚みがでた。観ている側との距離を調整したシーンだと思う。

その後すぐに病院で、顔色が良くなったと言われるシーンにつながることで山添の変化が見えて来る。



気を遣わなくていい、慣習になるから、でも、わたしこのどら焼き大好き、

このセリフは痺れる。こんな優しさを持ち合わせたい、
相手の気持ちも受け取って、それを否定はしないけど、言いたいことは言う

プラネタリウムみたい

病気の時とか自己嫌悪だと常に自分に矢印が向いてしまう。

そんな時に星とか宇宙とか自分には計り知れない広大なものと対峙すると相対化できる。きがらくになる。

事情を抱えていることと、星の話の2軸で進んでいくことがとてもバランス感のいい映画だと思った


弟をなくす、旦那さんをなくす、姉をなくす
働いている時には見えない個人の事情。

子供を持ちながら仕事をする、介護をしながら働く。
いろんな立場で働く人が描かれていた
労働映画としてもすごくいい

フィクションはすごい。必要なことを押し付けがましくではなく、娯楽の中で伝えられる

音楽も最高


男女だけど恋愛に流れなかったのもすごくいい。同僚の関係の中で進んでいく物語。

世界の殆どの人とは恋愛関係まで深い関係にはならない。
それでもケアはしあえる。だからできることもある。
別に恋愛関係になってもいいんだけど、そればっか映画で描かなくてもいい。

知ってしまったら知る前には戻れない。
相手へ認識は知ったことが前提になって感情や印象はできてくる
だから、誰にでも簡単に打ち明けることはできない。だから、そんな簡単に全ての職場で抱えているものを打ち上げあって、補完し合うことはでしない。

けど、病気を知った時、抱えているものを知った時?それが女性特有のものでも、性別に関わらず自分とは無縁のことでも知ることはできる。
と映画がまず示したことは希望。


自分の弱さを認めること、相手の弱さに共感できる力になる。また、自分と違う相手を受容する


自分と違う他者に出会った時どう対応すればいいのか、ひとつヒントをくれる。考える機会をくれる。


対話の映画

ピントは前の藤澤さんにあってるけど、しゃべっているのは後ろの山添くん

ならぶふたり

山添くんの上司も良かった。
バリバリキャリアで働いている人がなぜ、山添くんに寄り添っているのか不思議だったけど、彼のもつ事情がそうさせる


すごいいい会社
ザ 中小企業な会社だけど距離の近さがあるからこそ許容し合える、助け合える
違う工場のイメージを付与した

持続可能なケアの態度

子供も含め属性も様々


主人公が男女2人であること。2人ともが等しく役割を持ち、等しく写っていること。
それが生理をニュートラルに、ある種ただの症状として描かれている


P55

ケア

ケアとは必ずしも「介助」や「介護」のような特殊な行為である必要はありません。

むしろ、「こちらには見えていない部分がこの人にはあるんだ」という距離と敬意を持って他者を気づかうこと、
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