Thorta

夜明けのすべてのThortaのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.0
PMS障害を持つ藤沢とパニック障害を持つ山添。新卒として社会に馴染めず、町の中小企業に転職し出会った2人は障害を分かち合っていく。『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ原作の『ケイコ 目を澄ませて』三宅唱監督最新作。

 フィルムで撮影された温かみある映像と淡々とした日常の描写は前作同様素晴らしく、障害が主人公ではなく、あくまでそれを患っている1人の人間が主人公なのが良かった。
 前作では聴覚障害を持つ主人公の音の世界を表現していた監督ともあり、本作もPMSやパニック障害を持つ主人公たちがどのように音を感じているのかがしっかりと観客に伝わり、苛立ちや不安が分かるようになっていた。

 序盤は映画というよりは家族が障害になった人向けの紹介ビデオみたいだったが、三宅唱監督は凄く大人な視点でこの物語を見ていて、それがこの映画の優しさと心地よさになっている。それが2人が働く工場の社長の栗田と山添の元上司の辻本だ。
 2人の大人が障害に苦しみながら、新たな夜明けに向かう2人の若者をどうみているのかがこの映画の観客の視点と重なる。というより、こんな大人に成れたらいいなと思わせてくれる。
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