kao

夜明けのすべてのkaoのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.0
この映画のポスターを初めて観た時、あら?朝ドラ「カムカムエブリバディ」のあんこと稔さんじゃないのさ?と二度見してしまった。
「ケイコ」の監督さんでもあるし、これは間違いないな、と直感。

瀬戸内の凪の海のような作品だったなあ。
最初のよそよそしい距離感から、互いに抱えている事を理解しあいたいという気持ちからジワジワと、でも恋愛ではない、ほどよい距離感で互いを気にかける、そんなゆるやかさがとてもよかった。二人共、セリフっぽい感じじゃなく素で話しているような自然な会話のやりとり。髪を切るシーンと、藤沢さんのポテチの豪快な食べ方のシーン、笑っちゃったなぁ。あんなの恋愛関係ならできんもんなぁ。

パニック障害は経験ないのだけど、PMSという名前を20年程前に初めて何かで目にして、症状を調べるうちに、自分にも思い当たることがボロボロでてきたことがある。毎月理由もなく通勤電車の中で泣けてきたり、家事もいっぱいいっぱいで「何だ?!今日の変な献立!」という夫の一言にきれて攻撃的になってフライパン投げそうになったのを必死で自制したが毎月喧嘩三昧の繰り返しのあれこれはそういうことか?これなのか?と少し目からウロコだったことがある。昭和の昔はPMSなんて名前はなかったと思うし、その名前ができて初めて、そうか自分のせいじゃないのか、病気のせいなのか…と気持ちが幾分軽くなったのを覚えている。まぁ劇中にも藤沢さんのそんなセリフがあり、病気だからって全部そのせいにして開き直るわけではないけども。

病だけではない、栗田科学の社長はじめ、大事な人を失った喪失感や、みんな何かしら抱えている。
当事者にしかわからないこともあるのは事実。でも、だからこそ知って理解したいと想像力を最大限働かせて、さりげなく隣人を気遣うことができたなら、きっと世界はみんな栗田科学みたいなホームになる。
全編ほんとうにさりげない優しさと日常の緩やかな穏やかな時間の流れと他愛もない会話の数々の中に感じ取れる優しさ、気遣いに溢れていて陽だまりのような映画だった。
大人になってから仕事終わりに
仕事仲間とキャッチボールできる
夕暮れ時なんてなかなかないよなぁ。

劇伴音楽について
まぁ単調ではあったね…。
個人的には人の気持ちの表現として、素材が木でもあるマリンバの音なんかとてもあたたかみがあって合うと思うんだけどなぁ。
kao

kao