ウーピーブロンズバーグ

夜明けのすべてのウーピーブロンズバーグのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.8
私が映画沼にハマったのは大学生の頃。何の気なしに受けていた映画についての授業がきっかけだった。三宅唱監督はその授業の先生の友人であり、私の映画観は三宅監督や先生によって構築されてきた。
『夜明けのすべて』もその三宅監督による世界観、映画への向き合い方を非常に感じることが出来る素晴らしい作品であった。
光と影の使い方、16ミリフィルム撮影による温度感、主人公たちと観客を同じ時間軸で生きているように感じさせる世界観の構築、作品の細部までどれもが素晴らしく、多幸感に溢れている。
お互いを理解しようとすることで少しずつ変化していく山添と藤澤がとても感動的であった。山添が栗田科学のジャケットを着るようになっていたり、手土産を買うようになっていたり、些細な変化を劇的に描かずさりげなく映す演出がすばらしい。他人同士であるからこそ距離が近づいた者同士の関係性、そこに生じるおかしみや愛おしさ、映画の終わりと共に2人の関係も終わってしまうが、それでもこの2人はもう大丈夫と強く思わせる。
様々な人が様々な事情で生きている世の中だが、2人を優しく受け入れた栗田科学や山添の上司の様に、せめてそばにいる人たちだけは大切にしていきたい。