SNSでいいね稼ぎのほっこり話がバズるたびに、必ずと言っていいほど「やさしいせかい」というリプライが付き、「やさいせいかつ」というしょうもないミームが続く。そんなニヒルな現代を生きる私達にとって【優しい世界】は現実ではありえないファンタジーのような含みを持って聞こえてくる。それか揶揄と一緒に飲み下してしまうか。
『夜明けのすべて』は【優しい世界】はファンタジーではなく実現可能な世界なのだと教えてくれる。それもその気になれば明日からでも。
三宅唱監督の登場人物の心の機微を光で表現する自然光の演出はもはや異次元レベル。そして松村北斗の演技の素晴らしさ。確実にスターの存在感を放ちストーリーを牽引しながら、同時にスター性を完全に封印した演技が圧巻だった。
「救う」だとか「理解する」だとか構えなくても、「3回に1回」くらいの気持ちで誰かを助けてみたって、悪くないだろう（やさしいツッコミ）
