026/2024
「人にやさしく
自分にやさしく」
噂は予々、三宅唱監督作品は初視聴でした。
第一印象がキレイめなキービジュアルとキラキラしたタイトルだったので「あーまたよくあるやつねー」と思っていましたがとんでもない偏見でした。
重くなりがちなPMS(月経前症候群)とパニック障害をテーマに扱いながら明朗軽快で情緒的になり過ぎずとても見やすく作られていると思います。
今作に取り上げられているような障害に該当せずとも例えば「極端にお腹を壊しがちで朝の通勤ラッシュに乗れない」とか「気圧の変化で必ず頭痛が起きる」とか多かれ少なかれ体調に悩みを抱える多くの人に共感できる主題だと思います。
真摯な視点で妙に気を衒ったりせず
ゆったりとした長回しのカット割で細部に至るまで非常に丁寧に作られている印象で
ひと昔前の様なざらついたフィルムの質感も作風に合っていてよかったですね。
これが今どきの精細な画質だったら
物語全体がウソ臭く見えたんじゃないかな。
後半のほのかな恋愛要素(?)も
退屈になりがちな展開に
ほど良い味付けでいい塩梅だったと思う。
私(♂)は女性の生理というものが感情の起伏にも少なからず影響すると思っていたので
その昔付き合っていた彼女の生理周期もなるだけ把握しようとしたところドン引きされたという経験があるので2人の部屋のシーンはとても共感できましたねー。
悪い人が全く出てこない稀有な作品。
まるで中傷被害が横行するのは現実だけで十分だと言わんばかりに憎まれ役が皆無で
意地悪な見方をしちゃうと綺麗にまとめられすぎな気もしますが今作はこれが正解だと思います。
因みに毒があるとすれば山添(松村北斗)が元上司(渋川清彦)に今の会社を続けますと言った時の少しホッとした様な表情(絶妙なタイミングでバックショットに切り換えられていますが)くらいですかね。
↑
(後に皆さんのレビューを読んで
サークルに参加している辻本がこれを思うはずがないと思いました。
私の邪推でした。訂正させてください🙇)
役者さんの自然体な演技は物語に没入できる域には充分至っていると思うが欲を言えば主演の2人はもう少しという気がしないでもない。
山添が生活に支障をきたしているというシーンが少なかったのでもう少し悩んでいる描写があってもよかったかな。
零細企業の社長役を演じたら日本で右に出る人はいない光石研や出番は少ないけど岡みつ子と宮川一朗太の繊細な演技もよかったなー。
終盤のプラネタリウムのシーンは思うより先に涙が溢れてしまった。
地球と太陽の示唆も分かりやすいし
できれば全国の学校の授業で見せて欲しいとすら思えました。
エンドロールの日常の長回しのカットのおかげもあって清々しい余韻で劇場を後にできました。
「やさしさ」が世界を救えるのであればそれを願わずにはいられません。