CHICORITA主任

夜明けのすべてのCHICORITA主任のレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.5
瀬尾まいこによる同名小説を『ケイコ 目を澄ませて』で知られる三宅唱監督が映画化。

PMS(月経前症候群)による月に一度のいらだちを抑えられない藤沢を上白石萌音、パニック障害を患い生きる意欲を失っている山添を松村北斗が演じます。

様々な理由で生きづらさを抱え、自分を自分で救うことができなくても、誰かを助け、助け合うことはできるのではないか。
本作を貫くメッセージは、多かれ少なかれ生きづらさを抱えている全ての人に届く、優しくありつつも、どこか現実的で切実なものです。人と人が関わり合って生きていく意義や、理想のようなものが描かれていたように思えます。

藤沢と山添をはじめ登場人物たちの付かず離れずな微妙な距離感を、これまた付かず離れずなカメラや台詞回しが絶妙なバランスで描き、あまり人の内面に入り込みすぎない感覚の演出は非常に好ましいものでした。

「病気になって良かったことは?」や「夜がなければ周りに存在する星に気づけなかった」というセリフ、様々な病気や困難は辛いものではあるけれど、そこから得られるものだってきっとある。そんな前向きなメッセージを最後に受け取り、とても晴れやかな気持ちで劇場を出られるとても素敵な作品です。

久々に「これは自分の映画だ」と思える一本でした。
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