ryutalos

夜明けのすべてのryutalosのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.7
観る前は「なんか大事なところはさらっとして、映像がシュッとしてて、手触りがなくて、でも湿った感動を押し付けてくるような銃口映画だったら嫌だな」となんとなくの不安があった。
なんと失礼な先入観だろうか。
長いモノローグから始まる冒頭、あれ、「これそっちか」と的中の気持ちがじわじわ体に広がったが、そのあとはそんなことも忘れて没入していた。
手をついて謝ります。ごめんなさい。

よかったという表現をするのが正しいのかわからないけど、めちゃくちゃよかった。
この映画はまなざしがあたたかい。

人は、他人にはわからない弱さや悲しみを抱えている。
その傷は人によって受け方が違う。大小はない。
だからこそ他人に優しくなれる、とかそんな単純なものじゃないけど、その痛みを想像することは誰かを助けることになるかもしれないし、自分自身を助けることもあるかもしれない。
人が人とその場をともにすることを、なんの押し付けがましさもなく見つめている映画だった。

男にとってPMSは本当に解れない。
解ろうとすることすら反感を買ってしまうのではと、理解しようとすらしなくなったのかもしれない。
ただその考えが少し変わった。
パニック障害とは違うかもしれないが、心が疲れて休んでたことがあるので、気持ちが多少分かる部分がある。
だからかな、パニック障害も、PMSも、ほかの症状も、どんなことが辛いのかどんな気遣いをしてもらうと助かるのか、聞こうかなと思った。

藤沢さんと山添が、
「パニック障害なんで、って行きたくない飲み会断ったりしてるっしょ?w」
「いやPMSだからって何でも言っていいワケじゃないんでw」
っていうやりとりしてるの最高だった。
きっと理解し合ってる同士ってこうあるべきなんだろうな。

プラネタリウムをいきいきと語る山添のシーン、よかったなあ。

人との関わりを、もっとちゃんと向き合っていきたい。
静かなトーンの作品ですが、
終わったあともしばらく心がぽかぽかする余韻を感じながら、自転車を漕いで帰りました。
今日は空がきれいだなあ。
ryutalos

ryutalos