もた

夜明けのすべてのもたのネタバレレビュー・内容・結末

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

新作に関しては他にも見ないといけないの山ほどあるけど、とりあえずこれから。ほぼ滑り込み。
本当に素晴らしかった。足立智充は『きみの鳥はうたえる』のしょうもなすぎる役があったから、この「普通にいい人」が一層良かった。かなり端役だけど。
まずこれを題材にしたというのだけでかなりの意外性があるけど、それで言うと正直ちょっと期待外れだった『呪怨』とかもやってるし、結構色々な材料から色々なもの捻り出してて、(イーストウッドやロン・ハワードへのさりげない言及は置いておいて)三宅唱は単なるシネフィルじゃないと改めて思わせる。
時に他人をサポートできる人が時に他人を傷つけることもある。他に代用できるはずがない自己は、同時に流動的でコントロール不能な自己でもあるという普遍的な事実が、パニック障害とPMSという(語弊を恐れず言えば)現代病を患った二人を通して伝えられることの批評的な鋭さ。と同時に他者との繋がりの映画でもある。企業のコンプライアンス意識の醸成〜SDGsの流れは確実に社会を「生きやすい」ものにしている(例に漏れる会社ももちろんあるが)。それは法整備でよくなった部分もあるけど、定義やルール化に縛られることなく個々人に考える余裕を持たせ、広く道徳観を醸成できたからではと思う。規範と同時に道徳の両輪をうまく回せたところが大きいのではないかと。その意味で劇中の栗田科学は現代の企業の在り方のいいところがしっかりと出た会社だと思った。
内容にひとつ不満があるとしたら16mm撮影について、いい加減フィルムのザラザラした質感に馴染みが薄く違和感が出てきた(『さかなのこ』でも思った。『ケイコ』ではそれほどに感じなかったのはテーマとか作風の問題か)ので、日本映画はもう35mmにするかデジタルでいいじゃんと思った。
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