れおん

夜明けのすべてのれおんのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.5
わたしは自分のことがよくわからない。自分ではどうしようもできないことが多すぎる。それぞれの"生きづらさ"を抱えた二人。思うようにいかない毎日、心が、挫けそうになる。3回に1回ぐらいだったら、助けられると思う。会社の同僚として出会った二人は、恋人とも友達とも言い難い、かけがえのない関係性をともに歩んでいく。じゃあ、また明日... また明日。

糸を張り詰めたような緊張感に包まれる劇場。暗闇と静寂の中、ふたりをこの世界に繋ぎとめる物語。「映画」らしからぬ、「小説」のような関係性を構築していくふたり。とてもリアリスティックに相手に干渉し、互いの感情に触れる。言葉を包み隠さない対話から生まれる、純粋無垢な関係性。

『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督。そして、Hi'Specによる音楽。映像から音楽まで、自然体の世界を鮮やかに切り取る。とても緻密に練られている人物設定から生まれる登場人物への同一化による没入が見事。観客を取り残さないように、擬えるようにふたりの行動変容が起こる。『花束みたいな恋をした』とは似て非なる空気感。特段、何も起こらない。その時の流れが心地よい反面、出来事を埋めるかのように、"喋りすぎ"と感じるシークエンスが多いのも否めない。もっとも、善人のみで構築されている絵本のような世界にも違和感が残る。総じて、『きみの鳥はうたえる』の方が好み。

この世界は動いている。いま、ここにしかない闇と光。
すべては移り変わっていく。
そして、新しい夜明けがやってくる。

夜空に輝く星々は確かに美しく思うものの、都会の高層ビルやマンションの灯りの方に心が動かされることが多い。一つひとつの灯りを灯す誰かが、その街で、今日も眠れぬ夜を過ごし、朝が来るのを待ちわびているようだから。
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