大好きだった時代の、幼少の、青春の、憧れの日本映画を思い出した。
僕はなんという尊い体験をしたのか。
上映中のスクリーンと、出口と、階段と、ビル街に照りつける陽光が途切れることなく、地続きで、雑踏も何もかも美しく、知らない街にたどり着いたような、どうしようもない気持ちに駆られながら、まるでこの映画の登場人物の１人になれたような気分で僕は握り拳の奥に宝物を包んでいる。
これからのこと、彼女のこと、彼が発症した日のことを想いながら、僕は決意したダイエットのことを忘れてチェーン店のラーメンを啜っている。
美味い。
それだけで、こんなに嬉しい。
それもこれも、この映画を観たおかげ。
