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夜明けのすべてのIKのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.1
何より悩める男女が何やかんやで恋に落ちる話でも、相手の事情も考えず強引に考え方・生き方を強要してくるような話でもないのが良かった。

伝えにくい悩みや苦しみを抱える人たちが、同じように悩みや苦しみを抱える人を自分のできる範囲で寄り添い、助け合っていく様に「双方にとって丁度良い接し方」とは何かを考えさせられた。
当然空回りしてしまったり、受け手が鬱陶しく感じてしまう事もあるけど、そんな中で丁度いい塩梅を見つけ出していく流れは心地よく、そこから自分も少しずつ進もうとしていく姿は微笑ましい。
だから山添が自転車で街中を走ったり、ある時期から栗田科学の作業着を着ているといった些細な場面が、驚くほどグッと来てしまう。
また背景で黙々と仕事をしつつ時々2人を見守る栗田社長のさりげない仕草や、山添の元上司・辻本が卓球をしたあとの後ろ姿も、セリフなしなのに印象に残っている。
そしてエンドクレジットに溢れる静かな多幸感ときたら。

ただ反面、個人的な理由でしんどさを感じる所も多かった。
まず冒頭、新卒社員の藤沢がPMSの症状に悩まされ、会社の人に迷惑をかけてしまう場面は、新卒で入った会社でひたすらダメだった昔の自分と重なってしまい、見ているのがキツかった(自分は症状とか関係なく、ただ単純にダメだっただけなんだけど)。
そして以前メンタルを壊して会社を辞め、今も綱渡りのような精神的緊張状態が続いている自分にとって、舞台となる栗田科学とそこで働く人たちの姿が優しく暖かすぎて、かえって非現実的というかフィクションっぽさを強く感じてしまった。
かと言って「嘘くせぇ」の一言で切り捨てたくはなく、映画のように接したり助けたりしたいけど、まぁ難しいだろうし、うまくはいかないだろうなぁ…と勝手に考えてしまう。我ながら面倒くさい。
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