横川百子

夜明けのすべての横川百子のレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
3.5
とても丁寧に創られた誠実な作品だと思いました。

私自身も同様の病気の経験があり、この約九年間症状が出ていない事で勝手に完治したと自分に言い聞かせながらも、常に頭の片隅にその存在を感じながら片時も忘れる事なく生活しています。
鑑賞中もずーっと過去の色々な記憶が走馬灯のように駆け巡り、自然と藤沢さんと山添くんに感情移入できました。

脚色としては原作を先に読んだ方々にとっては色々あるみたいですが、原作未読の私にとっては最初にも書いた通り、丁寧に綿密なリサーチのもと細心の注意を払って書かれたシナリオを基に誠実に映像化されていると感じました。

ただ、これはホントにホントに致し方ないどうしよーもない部分でもあると思うのですが、やはりフィクションの「劇映画」として、あるいは私達当事者に寄り添って少しでも前向きに生きていける力を与えてくれる大事な大事な宝物みたいな映画作品として成立させるためには、身も蓋もないリアルな「現実」描写は敢えて排除され、若干ファンタジー性が強まっている感は否めませんでした。
けれど先日鑑賞した「PERFECTDAYS」に少し感じたようなファンタジー性への嫌悪感みたいなものは本作にはほとんど感じず重箱の隅をつつくように目くじらを立ててあげつらう必要もないかな?と感じています。

優しい作品です。