ふじこ

暗闇はまだずっと向こうのふじこのネタバレレビュー・内容・結末

暗闇はまだずっと向こう(2022年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

あぁ~泣いてしまった…とても素晴らしい作品。

愛した息子が自分から離れていく。
それは介護に疲れてしまったのかも知れないし、彼のやりたい事はここではなかったのかも知れないし。
でも息子は離れていく。いつでも電話出来るからね、とメッセージを残して。

息子の電話に直接出ないのは、プライドなんだろうか意地なんだろうか、それとも息子が選んだ以上邪魔をする気のない意思の現れなんだろうか。

かつての2人のとても仲の良い様子、そして今は一人で施設で暮らす様子。
寂しくて悲しいけれど、決して、絶対に息子にはそんな事を言ったりなんかしない愛や、中々電話しなかった言い訳の"忙しかった"、そして留守番電話に入らなかった"愛しているよ"の言葉。
きっと息子は全部分かっている。だからあんな顔でバスに乗って離れていくんだ。

わたしが長く暮らした親元を遠く離れて生活を始めて、たまの帰省でも親は普通にしているけれど、夫にこっちに支社はないのか訊ねたり、帰りの飛行機を前に寂しそうだったり、帰省したついでに行った旅行で今度は(わたしの夫)さんも一緒に…と言い掛けた母に間髪入れずに父がヤダって言ったり。(シャイだからだけど)
両親の愛を強く感じるほどに、どうしてそれに気付くのはこんなにも遅いのかと悲しくなってしまう。
そんな事に気付かせない程に当たり前に享受させて貰った愛なのだと理解は出来るのだけれど。

この作品の息子さんはとても若い青年なのに、その全てをきっと知っているんだろうなぁ。
でもそうであっても自分の道を選んだんだ。そしてそれをただ見送る父も、選んで歩き出した息子の中にもどうしようもない程の愛があって、確かにそれがあるからこその行動なんだろう。
どれだけ寂しくても自分の為に息子が何かを諦めるなんてして欲しいはずもないし。
愛だよ、愛。
だからこんなにも寂しくて、物凄く愛おしくて、なのに何でもない振りして我慢も出来るんだ。
とても愛おしい作品だったなぁ。
ふじこ

ふじこ