社会のダストダス

死霊館のシスター 呪いの秘密の社会のダストダスのレビュー・感想・評価

3.3
もしシリーズ未見の人で本作に興味がある人がいたとしたら、前作『死霊館のシスター』だけを観ておくのが、本作を最大限に楽しむ方法なのかもしれない。作品を重ねてシリーズの常套手段に慣れた影響かな。

しかし、少し前の『オクス駅お化け』では女子が悲鳴を上げて逃げ回るシーンが無くて物足りないと書いたが、本作は全編がそれで構成されるという殊勝な心意気の作品でもあった。

ウォーレン夫人にそっくりなシスターと、マリリン・マンソンにそっくりなシスターの第2ラウンド。

今までの死霊館シリーズとは少し趣が違うように感じた。

1.死霊館シリーズにしては珍しくストーリーが完全な続きもの。

2.同シリーズの中ではかなり殺意高め。

3.シスター・アイリーンは相変わらず可愛い。

前作で悪魔の尼僧をやっつけたシスター・アイリーンは英雄として崇められ、教会内で熱狂的なファンクラブが作られているはずだと予想していたが、シスターとしての慎ましい生活を送っている。教会からのヴァラク調査の要請に対しても最初は「怖い!嫌だ!」と固辞したが、半ば強制的に送り出される。なお前作で一緒だったバーク神父は大人の事情なのか病死している。

監督のマイケル・チャベスは『ラ・ヨローナ~泣く女~』と『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』に続きシリーズで3作目、何気にジェームズ・ワンより回数が多くなった。本作を含めた3作品に共通するのは作中で人が死ぬシーンが多く描かれているところ、ホラーでは当たり前な事だけど、元来あまり人が死なないシリーズでもある。あと今回、脚本に『マリグナント』や『ミーガン』の人がクレジットされているので、殺意の高さに一役買っているのかもしれない。

前述のとおり今回は殺る気に溢れたシーンがかなり大盤振る舞い。ヴァラク様も何度目かの登場になるけど、出てくる度に冥府に送り返されているので雪辱の機会に張り切っておられる様子、今回も最後は送り返されるわけだが。体感的には5分に一回くらい女子の悲鳴が轟いている(ありがたい)印象で、ワンが監督した2作品と比べると溜めがなく小出しに感じたので、これがスタイルなのかな。

ワンが監督してる『死霊館』と『死霊館 エンフィールド事件』は実話ベースの制約もあっただろうけど、死を最悪の出来事として描いていなかったのが作品全体の不気味さになっていたのだと思った。多分これは好みの問題だけど、完結編の可能性があるという『死霊館4』は、できればジェームズ・ワンで観たい。

本作は最低限、前作『死霊館のシスター』を観ておいたほうがいいけど、『死霊館』シリーズ全部を観ていた場合、ホラーとしての楽しみや新鮮味は薄れてしまうのかもしれない。一番斬新な演出を予告編で見てしまっているのは勿体ない。でも作品の出来としては前作よりも好き。

本編とは関係ないが、白塗りのお顔がマリリン・マンソンに似ているヴァラク様は、今回特にマンソン感あったように感じる。雑誌がパラパラめくれてシルエットが浮かび上がるシーンや、初登場のときみたいに廊下の奥に佇んでいたり、顕現を果たし神々しいお姿で宙に浮かんだりと、アルバムジャケット映えしそうなカットがかなり多かった。

無人の修道院だった前作と違い、本作では目撃者がたくさんいるからシスター・アイリーンの可愛さと格好良さが周知の事実となり、今回の戦功をもってヴァチカンでは正式にシスター・アイリーン・ファンクラブが設立されることだろう。