カルダモン

AIR/エアのカルダモンのレビュー・感想・評価

AIR/エア(2023年製作の映画)
4.0
NIKE、マイケル・ジョーダンの代名詞『AIR』。しかしこの映画の主役はM.ジョーダンではないし、NIKEの靴でもない。
低迷中であったNIKEブランドの起死回生策として当時の気鋭のルーキーであったジョーダンに目をつけ、広告塔としてオリジナルのシューズを開発し、ブランド力を決定付けようとしたオッサンたちの話。
とても地味だけど運動不足なオッサンが電話口で奮闘する姿やプレゼンの場で強引に突破していく姿はなかなかにスポーティで、また映画のテンポもサクサク進むのでなんだかアツい気持ちにもなってくる。

今の時代にジョーダンの知名度がどれくらいなのか見当もつきませんが、若い人でも名前くらいは聞いたことあるのだろうか。さすがに小学生、中学生は知らなくても無理ないかも。90年代当時、私自身はジョーダンよりもどちらかというと靴のデザインに興味を惹かれていて、友人の履いていた「エアジョーダン8」の見たことない感じに衝撃を受け、バッシュの絵を描いたりしておりました。

本作で「エアジョーダン1」の開発シーンが見られるのかと思いきや、サクッと土日挟んで週明けくらいに出来上がっていて、全然掘り下げられておらず残念。あの開発者にフォーカスを当てたドラマというので別の一本が作れそうですが、気持ちがいいくらいにカットされておりました。

機能かデザインか、という二択でデザインを選択したのは凄いですね。まずは目を引く興味を引くという一点突破の大博打。しかもNBAのルールを無視して赤×黒のカラーリングを貫き通し毎試合5000ドル(40万円)の罰金を支払い続けたという話も、広告塔として抜群の効果があったことを示すエピソード。

結局スポーツは金なのか?というモヤりを抱えつつ、ソレはソレ、コレはコレ。ジョーダンを口説き落とそうとするあのスピーチ場面は白眉。

マットデイモンとベンアフレックのポンコツ二重奏はどの場面も素晴らしく味わいがあって、輪をかけてヴィオラデイヴィスの断固たる母感や、クリスタッカーなどの面々が旨味爆発。地味なくせにまったく退屈しない会話劇。