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AIR/エアのEyesworthのレビュー・感想・評価

AIR/エア(2023年製作の映画)
4.9
【JUST DO ITとAIR JORDANの誕生ヒストリー】

監督ベン・アフレック、主演マット・デイモンによるNIKEの伝説のシューズ誕生の実話を描いた昨年の作品。

〈あらすじ〉
1984年、シューズメーカーNIKE本社のバスケットボール部門に勤めるソニー(マット・デイモン)は、CEOのフィル(ベン・アフレック)から不調のバスケットボール部門の立て直しを命じられる。そこで同年のNBAドラフト3位だったマイケル・ジョーダンという選手にいち早く目をつけ、彼はリーグを代表するスーパースターになることを確信し、彼との専属契約を念願に奔走する。
ちなみに、90年代を代表するスーパースターを多く輩出し、史上最高のNBAドラフトと言われた1巡目指名の主な選手は以下↓
(皆さんも聞いたことある名前ではないか)

1位 アキーム・オラジュワン
3位 マイケル・ジョーダン
5位 チャールズ・バークレー
16位 ジョン・ストックトン

しかし、当のジョーダンはNIKEとの契約だけは全く視野になく、業界トップであるadidasかマジック・ジョンソンやラリー・バードとのオールスターシリーズで一躍名を馳せたCONVERSEを候補に考えていた。
マイケルを説得するためには、まず彼の両親を口説かなければならないと考えたソニーは代理人を通さず、ノースカロライナのジョーダン宅に遠路はるばる赴き、ジョーダンの母デロリスと直接対面し、ソニーの熱意と思慮深い交渉で次のテーブルになんとかこぎつける。ただ、予算である25万ドルを彼一人に注ぎ込むというソニーのあまりにも無謀な提案は社内でも批判の声が強く、CEOもなかなかGOを出さなかったが、最終的に主要メンバーもソニーの背水の陣の賭けに乗り、覚悟を固めた。
そして、NIKE本社にマイケル・ジョーダンと両親の3人が訪れる運命の日。ありきたりなプレゼンで交渉が失敗に終わることを悟ったソニーは、動画でのアピールをいきなりストップし、マイケル本人に語りかける。
「靴はただの靴だ。だが誰かが履いた時、意味が生まれる。人々はその偉大さに触れたがる。自分のためではなく人々のために履いてほしい。」
そんな熱烈な想いを告げて、AIR JORDANという彼のためだけに開発した渾身の一足のシューズを紹介する。そこからNIKEとジョーダンの運命はの歯車は表裏一体に絡み合っていく…。

〈所感〉
私はジョーダンの世代ではないが、昔からNBA(特にレイカーズ)が大好きで、NIKEやJORDANブランドをこよなく愛しているが、この作品を見て恥ずかしながら初めてNIKEのバスケットボール部門でのこの成功秘話を知った。ジョーダンとの契約はお互い両思いで順風満帆に進んだものと思っていたが、ここまでの苦節があったとは知らなんだ。何より、ソニーの神のお告げのような先見の明に驚きだ。確かにジョーダンは高校時代に結果を残し、優れた選手であることは誰の目から見ても疑いようのない事実だったが、世界最高のバスケットボールリーグNBAにはそんなスターが幾多も在籍しており、誰も成功する保証などない。そんな舞台で自身の実力を証明し、独自のアイデンティティを創りあげることは一握りも一握りの選手だけだ。結果的に、そのナンバーワンでオンリーワンはマイケル・ジョーダンであったことは歴史が証明している。AIR JORDANシリーズは世界中で飛ぶように売れ、NIKEはバッシュ(バスケットシューズ)の最大手の座を獲得した。すべてはソニーのあの無謀な賭けから物語は始まったのだ。「JUST DO IT(とにかくやってみよう)」はNIKEの企業風土を象徴する有名な標語だが、「正しい行いは自ずから利益を生む」というスローガンは言い得て妙だ。このような仕事への姿勢も多く学べる映画なので、バスケ好きだけでなくビジネスに関わるすべての人に見てほしい。この映画を原動力に仕事に対するパッションが培われるし、ソニーの思考と行動力から多くのことを学べるだろう。
太っ腹な中年のマット・デイモンが誰よりもカッコ良くみえるのは錯覚ではない。
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