てっぺい

アナログのてっぺいのレビュー・感想・評価

アナログ(2023年製作の映画)
4.0
【アナログ映画】
アナログのあたたかさ、それによって紡がれる奇跡の物語は、原作がビートたけしとはにわかに信じがたい。アドリブ満載、かつ迫真の演技でニノの演技力も光る。全員善人、心ポカポカになれる一本。

◆トリビア
○海のシーンで、海の向こうに見える飛行場から飛行機が飛んだ瞬間に涙を流すよう、監督から指示を受けた二宮和也。無茶とも思える演出だが、見事にそれをやってのけた姿に波瑠は感銘を受けたという。(https://mdpr.jp/news/detail/3965160)
〇二宮和也は、現場に台本を持ってこない。過去共演した役者はそろって彼のオンオフがすごいと驚くという。(https://mdpr.jp/interview/detail/3963531)
○ 蕎麦打ちのシーンは、使われているのはほんの少しだが、講師に教わりながら、蕎麦粉をこねるところから最後まで本人が全部やった。長く撮る事で、役者に出る“緩み”、本来見えないものが見えたときに喜ぶ人だと、二宮は監督の事を理解している。(https://lp.p.pia.jp/article/news/291009/index.html)
○波瑠は、台本から読み解いた、みゆきの内面からくる上質な佇まいを崩さないよう演じる事を心がけた。(https://eiga.com/news/20231004/12/)
あるシーンで流れる音楽に対して「流れるメロディの“この部分”になったら泣いてください」との難易度の高い演出に、一か八かで挑んだが何とか乗り切った。(https://article.auone.jp/detail/1/2/4/339_4_r_20231005_1696471231452598?page=2)
○ 焼き鳥屋での悟と幼馴染2人のシーンは、クランクインの初日。昔からの幼馴染としてはまだ微妙にかみ合っていないと感じた監督は、台本にない芝居に10分以上カメラを回し続けた。(https://lp.p.pia.jp/article/news/286874/index.html)
桐谷健太は、原作のキャラクターに寄せた言動や下ネタも入れていたが、完成した映画を見たらカットされていた(笑)。(https://allabout.co.jp/gm/gc/499518/)
○原作のビートたけしは、簡潔に言葉を選んで、短い時間で笑いに持っていく漫才師には文学の力があるはずだと昔から考えていた。(https://www.bookbang.jp/review/article/538845)
本作も始めから映画のプロットとして考えた。映画と同じく、4コマ漫画のように起承転結を考え、最後にこの画で終わると決めて本を書いたという。(https://www.bookbang.jp/review/article/538845/3)
〇実際のセリフのページ数の5倍にのぼるほど、監督がカットをかけない、役者にとっての”フリータイム”があった。島田紘也を演じたなにわ男子の藤原丈一郎は、アドリブを連発して二宮から「令和の喜劇王」と呼ばれたという笑。(https://mdpr.jp/interview/detail/3963531)
○浜野謙太は撮影期間中、二宮和也と桐谷健太に自身の夫婦関係を相談。カメラが回っている時でもその話をしていたという浜野は、妻との「スイートテンダイヤモンド」を買い、良好な関係になったという。(https://www.entax.news/post/202308301700.html)
○ 悟の上司・高橋俊和役を演じた宮川大輔は、多忙のため撮影が一日しかなく、全て一発本番に。カットのかからず4~5分続いたアドリブは、現場もウケていて、『さすがだね』みたいな空気になっていたが、本編には1秒も使われていなかった笑。(https://www.thefirsttimes.jp/news/0000333626/)
○劇伴を担当したandropの内澤崇仁は、制作した楽曲5〜6曲が監督から全てボツとされた事を明かした。2023年8月の時点でまだ全ての完成にも至っておらず、それだけ妥協の許されない現場だという。(https://news.j-wave.co.jp/2023/08/content-2152.amp.html)
インスパイアソング「With」を制作した幾田りらは、映画を見て号泣し、そのまま夜中の3時から昇る朝日を横目に曲の構想を練り始めたという。(https://landoer.jp/analog-movie_1/)
○ 喫茶店「ピアノ」のロケ地は原作と同じ東京の広尾。その他広尾商店街や、居酒屋のシーンは有楽町など。(https://article.auone.jp/detail/1/2/4/339_4_r_20231005_1696471231452598?page=2)

◆概要
【原作】
ビートたけし「アナログ」(70歳にして初めて書き上げた恋愛小説)
【脚本】
「宮本から君へ」港岳彦
【監督】
「鳩の撃退法」タカハタ秀太
【出演】
二宮和也、波留、桐谷健太、浜野謙太、藤原丈一郎(なにわ男子)、坂井真紀、筒井真理子、宮川大輔、佐津川愛美、鈴木浩介、板谷由夏、高橋惠子、リリー・フランキー
【公開】2023年10月6日
【上映時間】120分

◆ストーリー
手作りや手書きにこだわるデザイナーの水島悟は、自身が内装を手がけた喫茶店「ピアノ」で、小さな商社に勤める謎めいた女性・美春みゆきと出会う。自分と似た価値観のみゆきにひかれた悟は意を決して連絡先を聞くが、彼女は携帯電話を持っていないという。そこで2人は連絡先を交換する代わりに、毎週木曜日に「ピアノ」で会う約束を交わす。会える時間を大切にして丁寧に関係を紡いでいく悟とみゆき。しかし悟がプロポーズを決意した矢先、みゆきは突然姿を消してしまう。


◆以下ネタバレ


◆海とバイオリン
大海原と、バイオリンを弾く1人の女性が映し出される冒頭。ここで本作が、この2つをキーに展開していく事が記される。海は、悟が母と“いつまでも見ていられる”と語るほど家族の絆の象徴であり、悟とみゆきが終わってみれば共に生きる事を誓った場所でもあり、意識が戻ったみゆきに“これからは毎日が木曜日”と悟が心を灯した場所。タイトルバックも海だったし、なるほど紛れもなく海は本作のモチーフとして描かれていた。みゆきが著名なバイオリニストと分かるシーンから、なぜ彼女がハグをしたのか、ジャーマンポテトに詳しかったのかが紐解かれる細かい伏線回収へ。バイオリンは前半から後半に転換する起点のアイテムになっていた。ラストで映し出された、みゆきのバイオリンを客席で聞いていた悟の姿は、みゆきのバイオリンを聴く悟の願いが、いつか叶う日が見えるよう。そんなあたたかいラストの演出がなんとも本作らしかった。

◆演技力
冒頭の朝食にほくそ笑む“ささやかな”演技から、意識のないみゆきとの対面に顔を赤らめ涙する“大振りな”演技まで、ニノの演技力の振り幅がすごい。さらにみゆきの介護をかってでる覚悟の涙と、みゆきの意識が戻るラストに流した歓喜の涙と、涙の演じ分けまでオンパレード。「ラーゲリより愛を込めて」('22)での減量した姿も記憶に新しいが、本作でも十分彼の演技力を堪能できた。波瑠の、凛としてどこか謎めいている姿もとても役にハマっていたし、桐谷健太と浜野謙太のなんとも役と本人の中間のような笑、アドリブの応酬でとても楽しく鑑賞できた(特にIT笑)。

◆アナログ
家での生活から、仕事で携わる空間の設計(模型)まで、手作りにこだわる悟。スマホではなく、糸電話で心が通じ合った2人を見ていると、本作のメッセージはアナログである事のあたたかさ、そしてそれこそが真実である事を説いているよう。本作で1番印象的だったのは、悟が意識を失ったみゆきの介護を迷わずかってでた事、そしてそれを献身的に貫いた姿。まさにアナログな真実の愛で、みゆきの意識が少し戻るという展開こそが、本作がそれを全肯定している証。そんなあたたかな演出に心もポカポカ、出演陣の迫真の演技でその真実味もグッと増していたと思う。幼馴染2人含め、悟とみゆきを取り巻く人達も全員善人でその優しさが心に響く。あらゆる要素がアナログという一つの表現にまとまり、あたたかいメッセージを発信する、また素晴らしい作品に一つ出会えました。

◆関連作品
○「赤めだか」
2015年のTBS年末ドラマスペシャル。タカハタ監督が演出し、二宮和也とビートたけしがメインの出演者。配信情報ナシ。
○「鳩の撃退法」('21)
タカハタ秀太監督作品。プライムビデオ配信中。

◆評価(2023年10月6日現在)
Filmarks:★×3.8
Yahoo!検索:★×3.5
映画.com:★×3.5

引用元
https://eiga.com/movie/98968/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/アナログ_(小説)
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