ハル

アナログのハルのレビュー・感想・評価

アナログ(2023年製作の映画)
4.2
海の広さと陽の光が、親友の二人が、
悟とみゆきの互いを思い合う心が
優しすぎて…溢れ出る涙は止まらなかった。
癒やしと愛のアンサンブル。
ひたすらにピュアな想いに包まれる純愛映画、ラブストーリーとしては今年NO1にランクイン。

出会ったカフェでさりげない会話をした瞬間に惹かれ合う二人。
リリー・フランキー演じる店長のナイスサポートが光る。
カフェのデザインを手掛けた悟に「とても素敵でした」と、声をかけるみゆき。
男なら秒で惚れてしまうね。
汗と涙の結晶である“仕事”を褒めてくれる事ほど嬉しい瞬間はないもん。
お互い奥手で探り探りな感じや初々しさが堪らなく…共感の嵐だった。
ニノは同年代なので「あぁ、初対面の女性相手だとボクもこうなるかも」と、等身大のシンクロ感が心をつかんで離さなくなる。

朝起きて、ぬか漬けを切り、一汁三菜の食事。
悟の人柄が表れているライフスタイル。
なんかいいんだよなぁ、こういうほっこりする空間と時間。
豪華さではなく“丁寧さ”に彩られ、潤いを感じさせてくれた。

また、今作を語るうえで絶対欠かすことのできないキーパーソンが親友の二人。
こんな友人がいたら、それほど幸せなことはない。
そう感じるほど、友達思いで気持ちの良い面々。
桐谷健太と浜野謙太のコンビは最高だ。
丁々発止のやり取りもキレキレだった。

そして…天才的なセンスと感性で主演を張るのが二宮和也。
『ラーゲリより愛をこめて』も圧巻だったけれど、現代劇でその魅力はさらに増す。
一見、頼りなさげな等身大のアラフォー独身男性、その“ナチュラルさ”こそ到達点(ちなみに仕事面において悟は超優秀)
彼の芝居へのアプローチはいつもながら秀逸だ。
泣きのシーン、笑いのシーン、顔をくしゃくしゃにして感情を伝えるその一挙手一投足が素晴らしすぎて…スクリーンから目が離せない。

親友二人に支えられ、みゆきと少しずつ距離を縮めていく姿を見ていると「がんばれ、大丈夫だ、きっとうまくいく!」
二人の幸せを願い、応援し続けた2時間は僕にとって至福の一時だった。
思えば学生の時にたまたま行った舞台挨拶が蜷川監督の『青の炎』
それが役者二宮和也の初の単独主演作品。
あの頃から非凡なものを示していたけれど、様々な経験を経て、日本を代表する役者に成長したんだね。
感慨深く、記憶が想起された。

ヒロイン役の波瑠もミステリアスで掴めない雰囲気のお嬢さんにピッタリ。
詳しくは触れられないけれど、品の良さが際立ち、深みのあるお芝居。
二面性をしっかりと演じ分けており、単独主演が多いのも納得。
今作のみゆき役が本当に似合う女優さん。

ストーリー、役者陣のお芝居、演出。
全て文句なし。
ピュアラブストーリーに溺れたい方は迷わず劇場へ足をお運びください。
劇中には生のオーケストラが流れるシーンもあるので、クラシックが好きな方もオススメです。

最後に少し付け足し。
本作は僕にとって特別にシンパシーを感じてしまうファクトが存在する。
二人が初めて食事をした後の帰り道、何気ない会話をしている背景
「あれ、いま通ってきた道じゃん!」と気付く。
作品の舞台は広尾だった。
“TOHOシネマズ六本木ヒルズ”へ行くときは必ず通る道なので、当然この日も。
さらに「今日は木曜日ですね。木曜日にピアノで待ち合わせしましょう」(ピアノはカフェの名称)との劇中の会話。
「ん…今日は木曜日じゃん!」
ありふれた偶然だけど、彩り豊かなスパイスが沢山ふり注がれた瞬間。
普段生活している場所が出てくると、親近感が湧き、胸がトキメキません?
帰りも同じ場所を通過。
悟とみゆきは歩いていないかな?なんて、見回しつつ帰路につきました(いるわけないけどね)
ハル

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