ぶみ

はざまに生きる、春のぶみのレビュー・感想・評価

はざまに生きる、春(2022年製作の映画)
3.5
あなたが分からなくて、
  あなたを知りたくて、
 わたしの恋が始まった。

葛里華監督、脚本、宮沢氷魚、小西桜子主演によるドラマ。
発達障害を持つ画家と、彼に取材で出会い、次第に惹かれていく雑誌編集者の姿を描く。
主人公となる青い絵しか描かない画家、屋内透を宮沢、彼を取材する編集者、小向春を小西が演じているほか、細田善彦、平井亜門、葉丸あすか、芦那すみれ、戸田昌宏等が登場。
発達障害と一言で言っても、症状は様々であり、本作品における主人公、屋内は自閉症スペクトラム障害の中に位置付けられるアスペルガー症候群であるため、遠回しの表現や表情を読み取ることが苦手であったり、一度始めた行動が止められなかったり、はたまた空気が読めなかったりと、様々な症状が見て取れる反面、その自身が持つ拘りを活かし、画家として生計を立てる役どころを、宮沢が見事に演じている。
そんな屋内に次第に惹かれていく小西演じる春も、人が左側にいないと落ち着かないという設定であり、そう言ったことは、多かれ少なかれ、人間誰でも持っている拘りであるであろうし、それが日常生活に影響するか、それを生きづらく感じるか、の違いで障害と判定されるか否かだけのこと。
そんな屋内に、戸惑いながらも惹かれていく春の姿や、それに対して止めようとするライターの発言のどちらもが人間の正直な部分ではなかろうかと思わせてくれるところ。
何より、描かれる季節そのものが桜舞い散る春であり、柔らかい木漏れ日が常に降り注ぐ映像美は、雰囲気抜群。
障害を扱う作品は、得てして重苦しかったり、お涙頂戴な展開になりがちだが、そんなあざとさは皆無であり、障害の有無に関係なく、いかに気持ちを伝えるかの大切さを、透明感溢れる主人公二人の演技で描くとともに、黒白つけられることなんて実はそんなになく、殆どがそのはざまにあり、人は皆、そのはざまで生きていることを教えてくれる一作。

タイトルは、春が来た。
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