ぶみ

おまえの罪を自白しろのぶみのレビュー・感想・評価

おまえの罪を自白しろ(2023年製作の映画)
3.5
本当の敵は、誘拐犯か、この国か。

真保裕一が上梓した同名小説を、水田伸生監督、中島健人主演により映像化したサスペンス。
国会議員の孫娘の誘拐事件が発生、議員が過去に犯した罪を告白しろという犯人からの要求に対峙する人々の姿を描く。
原作は未読。
孫娘が誘拐された衆議院議員で内閣府副大臣の宇田清治郎を堤真一、清治郎の次男で秘書でもある晄司を中島、長男で県議会議員である揚一朗を中島歩、長女で孫娘の母である麻由美を池田エライザ、麻由美の夫で市議会議員である恒之を浅利陽介、事件を追う刑事を山崎育三郎が演じているほか、角野卓三、金田明夫、美波、尾野真千子、三浦誠己、矢柴俊博、柏原収史、中村歌昇、アキラ100%、山崎一、尾美としのり、池田成志、菅原大吉、升毅、平泉成等々、数えきれないほどのメンバーが集結。
物語は、清治郎の孫娘の誘拐事件が発生するが、身代金ではなく、指定した期限までに「おまえの罪を自白しろ」という風変わりな要求がなされる設定であるため、清治郎が一体何を喋るのかという、通常の誘拐ものとは違う観点で進行し、タブレットに浮かび上がった文字が、そのままタイトルバックになる演出も秀逸。
以降、前半は誘拐事件そのものを扱うサスペンス、後半は一転、その裏に隠された事件の真相が徐々に暴かれていくという社会派ドラマへと舵を切っていくため、一粒で二度おいしい展開に。
何より、政治家一族の長で国会議員であり、私生活では孫を可愛がるという二つの顔を持つ清治郎を演じた堤の演技を筆頭に、長男、次男を演じたW中島も含め、キャストは配役、演技とも文句なし。
ただ、一族や政府側にスポットが当てられており、展開もテンポが良い反面、警察側の視点が足りず、無能っぷりが露呈していたり、犯人側の背景もあっさりしていた面があったため、もう少し尺が長くなっても、その辺りが丁寧に描かれると、もっと良くなったかなというのが正直な印象。
冷静に考えると、ツッコミどころは多々あれど、全体的には、前述のような期限が迫るタイムリミット・サスペンスと政治の暗部に斬り込む社会派ドラマとして十分楽しめる仕上がりとなっている反面、公開二日目の昼の回で、観客が思いのほか少なめであったため、興行収入が心配な一作。

力を貸してください、罪を自白させるために。
ぶみ

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