あ田

陽の届かない場所でのあ田のレビュー・感想・評価

陽の届かない場所で(2017年製作の映画)
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チュニジアの人権活動家アミーナ・サブウィ(Amina Tyler/Sboui)のドキュメンタリー
サブウィは2013年に「My body is mine 」と書いた上半身裸の写真をfacebookにアップして物議を醸し、逮捕された人 私もこの映画観て当時ニュースで見たのを思い出した
彼女は釈放された後一度フランスに行き、その後チュニジアに戻って執筆やLGBTQコミュニティの支援をしていたらしい(本人は作中でアライだと言ってた)
その時の様子に密着したドキュメンタリー映画

同性愛や異性装のために元のコミュニティに居られなった人たちとサブウィが大勢で一緒に暮らしてる様子は側から見ると楽しそうだけど、それぞれ違う形の苦しみを抱えてるしこの家が完全に安全で楽しい場所というわけでもないことがだんだんわかる
親に勘当された人もいれば、「家族は理解しようとしてくれるけど近所の目が怖い、自分のせいで家族に迷惑がかかる」と感じてサブウィの元に来た人もいる

サブウィ本人も過去にトラウマがあるし、「みんなを助ける強いヒーロー」ではなく、取材中に体調崩した時もあった
それでも自分達の故郷をより良くするために出来ることを考えて行動している
ちゃんと覚えてないけど、「道徳とは"理想的な女性"になることではなくどれだけ与えられるか」というようなことを言っていた気がする

こういう話は「やっぱりイスラームって怖いね」と単純化されて他人事として消費されてしまうことも多いけど人々や社会がマイノリティに不寛容であることは別にイスラーム固有の問題じゃなく、実際に日本でも今起きていること(神道政治連盟のアレとか首相秘書官のアレとか諸々……)
作中でも宗教への言及はあまり無く、「イスラーム法のせいで」という話ではない
固定概念を持ったまま観ると「チュニジアは/イスラーム社会はこんなに酷くてこの人たちは困ってるんです」に見える人もいるんだろうけど私はもっと普遍的な話だと思った

まあそりゃあ人間の暮らしは宗教だけじゃないので、仏教でもカトリックでもイスラームでも同じように真面目な人もカジュアルな人もいるのが当然 差別する側もされる側もそれは同じ
日本では今同性愛で逮捕されることはないけど、社会の色んな構造に差別が組み込まれてるし最近はトランスフォビア言説が大きくなってて怖い 近い未来「日本の伝統的男女観にそぐわない言動で公共の安全を脅かした」と逮捕されるようになる可能性も全然ある
比較的安全そうに見えてたアメリカでもドラァグショーが規制されたりし始めてるし、この話を「やっぱりイスラームって怖いね」だけで済ませることはできないな


全然本題じゃないんだけどサブウィのピアスとタトゥーめっちゃ可愛くて憧れる……
あと布ソファ置いたまま床を水で流すの見ててヒヤヒヤした 服装とか見てても気候が違うんだろうな〜と思って海外旅行したくなったな……お母さんのクスクス美味しそうだった
あ田

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