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There Will Be No More Night(英題)
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『There Will Be No More Night(英題)』に投稿された感想・評価

豚肉丸

豚肉丸の感想・評価

4.5
戦闘ヘリコプターの空撮映像で構成されたショックメンタリー

強烈。
戦争の映像は必ず政治的文脈が付き纏うものであり、それはヘリコプターの空爆映像であっても同様である。しかし本作はそれらの政治的文脈を排除し、「映像」として空爆映像を見させられる。
映像には必ず撮影者と被写体が存在する。空撮映像の場合はヘリコプターで攻撃する側が撮影者であり、地上にいる兵士が被写体である。基本的に兵士は空中のヘリコプターの存在に気づいていないため、撮影者が一方的に被写体を撮影するという構図が成り立つ。当たり前のことなのだが、だからこそ残酷性がより際立つ。
ヘリコプターによる一方的な攻撃の数々を見せつけられるも、そもそも画質が悪く、射撃した瞬間に砂埃が舞い地上の様子が見えなくなるため「人を殺した」という実感は湧きにくい。夜間になると人は光る物体としてしか映されないため、人間は全て記号的に表される。

しかし後半は打って変わって、人間の生活についてフォーカスが当たる。その中でも印象的なのが、子供の遊びと家族の遊びを映した場面。本編内で「兵士はこれが兵器であることを忘れて、カメラとして映していたようだ」と語られるように、ここではカメラとして機能する。しかし照準は常に映されており、(図らずも)子供達の身体を狙っている状態になっているのが恐ろしい。
他にも爆撃から逃げ惑う人々の様子や爆撃から生き延びたものの痛みに苦しんでいる様子の人々が映し出されるのだが、
人間としての動きが映されることにより、前半中盤では感じられなかった人間性をここで初めて目の当たりにし、ゾッとした。そして容赦無く爆撃を加える軍の残酷さ。本当に恐ろしい。

まさに現在進行形でネット上に新たな空撮映像がアップされる今の時代だからこそ見るべき作品。文脈が共有されている戦争だと政治的に正しい側が政治的に正しくない兵士に空爆する映像を見ても、文脈的な正しさで判断してしまうものの、こうして文脈を排除して空爆の映像それだけを見ることを強制されると、改めてその残酷性を突きつけられる。強烈。