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四次元のTnTのレビュー・感想・評価

四次元(1988年製作の映画)
4.5
 好きな世界観すぎ。窓とその向こうに抜けるような青空というマグリットのようなモチーフと、岩や人々が同列に配置される。これがまた合成でもCGでも無いというのがすごい。音楽やモチーフのせいか、Vaporwaveっぽい90年代前後のノスタルジアも感じる。

 なんてったってビデオの走査線のメカニズムを利用しているのだから、テクノロジーの点に於いてもノスタルジックである。走査線が画面上と下でラグを起こし、図像の時間軸がずれることで像も遅れる、そして歪む。時間を超えた像の視認、それはまさに四次元的な世界と言える。発想が天才的。

 男女が交差するというのは、彼の作品「Imagine」あたりにもテーマとして窺える。今作の螺旋状に並ぶ男女は、それだけでDNAの二重螺旋に近いものを感じる。映画がアクション、モーションによって成り立つ中、今作の男女は殆ど演技としては静止しており、走査線でずれた時間が彼らがあたかもぬるりと動いているように見せかけるのだ。だからこそ、石膏像や石などの無機物が動く際の面白さったらない。静止した人の中の情動があたかも働いているかのようで、それは無意識の発露、つまりシュールに近い気がする。マグリット的なのが、そのせいかよく似合う。

 調べたら、リプチンスキーは「アングスト」の共同脚本、編集として制作に関わっていたようだ。数々のMVも担当し、こうした実験精神に富んだ作品も残しながら、ああいったサイコホラーも作れるとは。「アングスト」未見なので、リプチンスキーが関わってると思いながら観てみたいな。
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