symax

ビデオドローム 4K ディレクターズカット版のsymaxのレビュー・感想・評価

3.8
"…come to me…please…"

"もっと刺激を…"

暴力と性を売り物とするケーブルTV局"シビックTV"の社長マックスは、偶然捉えたある映像…ひたすらに続く拷問と殺戮…"ビデオドローム"と題された過激な映像に引き込まれる…

"ビデオドローム"の謎を解明しようと調査を開始したマックスは、ある男に辿り着く…

その男…オブリビアン教授はマックスへ送ったビデオメッセージで、"ビデオドローム"を観た者には脳腫瘍が出来、幻覚を魅せる…

呼吸するビデオテープ、テレビ…やがてマックスの腹には女性器のような穴が開き…

そしてマックスは現実と幻覚の境界が曖昧になる…

80年代を代表するカルト作…私にとってクローネンバーグとの初遭遇であったのが本作…

何だかさっぱり分からない…それが初鑑賞時の感想…まぁ、ガキには分からんですわね。

まさか劇場で鑑賞出来るとは…クローネンバーグのお家芸であるボディ・ホラーの頂点のような気がします。

ジェームズ・ウッズ演じる主人公マックスの現実パートと幻覚パートの境界線が曖昧なだけにストーリーを追うだけでは難解であるかも知れませんが、大人になった今、改めて鑑賞すると話の筋は案外シンプルに感じます。

パックリと腹に空いた穴は、明らかに女性器でそこにビデオテープを突っ込む姿は性行為そのもの…しかもほぼレイプ…それは抑圧された女性のメタファーのように捉えることも出来ます。

当時最先端のSFXは、今観ても通用するレベルの高さで、ベータテープだから腹に入るんだよね〜と妙に納得…日本はVHSテープが主流だからなぁ…なんて初鑑賞時思ったものですが、今の若い人には、ベータとVHSなんて分かんないでしょうね。

過激な映像に溢れ、更なる刺激を追求する姿や現実世界と幻覚世界が曖昧になる姿、陰謀が蠢く社会は、ネットやVRが乱立する現在の社会を予見しているようで流石クローネンバーグと唸らせられるのです。
symax

symax