まりてぃ

ドキュメント サニーデイ・サービスのまりてぃのレビュー・感想・評価

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初期のサウンドの印象から、はっぴいえんどの系譜として扱われることも多々あるサニーデイだが、はっぴいえんどが東京の中心地で生まれ育ったエリートボンボンたちの集まりなのに対し、曽我部も田中も生まれは香川で最初に始めたバンドはその名もThe ASSHOLE。

私にとってサニーデイはエモい思い出がいくつかあってコピバンを組んだほどには曲も好きだけど、バンド自体や曽我部への解像度はあんま高くなかった。
曽我部の伸びやかな声と甘酸っぱくセツナを感じるリリック、名曲のフォーキーなムードばかりに意識がいき、勝手に爽やかな風が吹くようなイメージ。
しかしその正体は、これだけキャリアを積んでも尚ハイエースで全国ツアーを巡業するゴリゴリのロックバンドであり、むしろどんどんインディーズマインドに回帰していってるかのようなハードコアな魂をひしひしと感じる。

リハ映像でも独裁的なフロントマンに時に不条理に怒られる献身的なベーシスト…といえば聞こえはいいが監督のアフタートーク曰く田中さんからバンド(曽我部)への不満を聞いたら最後、朝を迎えるほどらしい。
同じく大学時代に結成され天才的な独裁者フロントマンが率いるバンドのドキュメンタリー『くるりのえいが』も先日観たが、色々あった岸田と佐藤さんはむしろ強固な信頼関係で繋がっている印象。一方の曽我部と田中さんは本当に仲は良くなさそうで、ヒリついた緊迫感さえあることも。

今回ドキュメンタリーとしてはカンパニー松尾の編集は好きじゃないんだけど(自分でも編集のバランスが悪いとトークで吐露していたが)、楽曲を聞いてるだけだとわからなかった曽我部恵一という人間の曲者具合や、想像以上の熱い側面がちゃんと記録されていた。そういう意味で観てよかったなという一本になった。
正直丸山さん逝去以降のライブパフォーマンスを目にしてない自分からすると大工原さんのドラミングも初めて知ったわけだが、こりゃスリーピース向きだわなという感じ笑 psまで付けて『風船讃歌』を最後の最後に付け足した演出は、映像作品としては全くスタイリッシュじゃないが新体制サニーデイのスタイルや熱量を表すには適していた気もする。
でもいつかまたオルガンのある『青春狂想曲』をライブで聴けたらいいなー。

劇中でも印象的に使われた丸山さん逝去前の最後の渋谷公会堂ライブも(2015.03.27 “サニーデイ・サービス 渋谷公会堂コンサート 2015”)あの時行ったなあって懐かしさが溢れたー
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