Kitty

ミンナのウタのKittyのネタバレレビュー・内容・結末

ミンナのウタ(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

主演がGENERATIONSさんだったので、アイドル映画的なホラーかと思って舐めてました。結構しっかり怖かった。

心霊写真のような霊の映り込みや霊の異質感の表現に関して、手数の多さと大胆さはさすが清水監督。
過去の清水作品の中でも上位の巧さだと思う箇所がいくつかあった。
というか、ここまで心霊実話的な手法を使っている清水作品を近年観ていない気がする。

歌が題材だからか、音を用いた演出が多かったのも興味深い。
早見あかりの首を掻く音、マキタスポーツのペンのノック音、車のシートを叩く音、貧乏ゆすりetc……気になりだすとストレスを感じる音が随所に入ってくるのも、映画全体の不快感を上げる一助になっていて、なおかつそれらに意味を持たせていたのは良かった。
お腹の中の弟が何故そのリズムで叩いて亡くなったのかが特に分からないのは気になったが。まぁ、呪いの歌のリズムだったからとかそんな理由なのかもしれないが、気味の悪さはあれど正直ピンと来なかった。

監督が異なる呪怨白い老女の、冒頭の声かけループの演出をさらにブラッシュアップしたような中務さんの恐怖パートがとても印象的。
白い老女だと振り返ったらオバケがドーンでシーンが終わりだったから、その予想を見事に裏切ってくれたのが良かった。
カメラの切り替えと中務さんの表情等の演出で異常性を分らせつつ、終盤の伏線(ドアの影)も張りつつ、上から来ると油断させておいてからの母親が襲いかかってくる…お手本のような恐怖シーンでとても好き。

海外の某映画わりとそのままな関口さんのシーン、呪怨劇場版1作目のお布団やら呪怨シリーズ名物の階段降りセルフオマージュなどなど、いろいろなホラー作品を彷彿とさせる演出があった。
他監督作品オマージュには、清水監督なりの味付けがされていて監督の恐怖観みたいなものを窺い知れたようで興味深かった。
セルフオマージュは監督の作品を観てきた者としては楽しめた。
が、同時に結構パクってるけど大丈夫か…?ネタ切れ…?と心配にもなった。


ストーリーとしては、呪怨っぽいというか、呪いの家が呪いのテープに変わっただけでほぼ呪怨。
呪いを直で受けた人は勿論その周囲の人も間接的な影響で呪われてしまう理不尽さも、ただの被害者かと思いきや実は異常性を秘めていたというどんでん返しも、ラストバトルが家な点も、あらゆる部分で呪怨っぽい。
セルフオマージュと言うのか、手抜きというのか、お家芸というのか、まぁ面白かったので良しとしようと思う。
クライマックスの怪異の釣瓶打ちは良かった。

終盤まで犠牲になるのが小森さんとADの2人だけだったから、怪異を解決しなきゃいけないという緊急性・危機感が微妙に上がりきらない(もっと上げられそうな余地を持ったまま進む)のが気になった。
マキタスポーツの娘とかラジオ局の男たちとか、もうちょっとやりようはあったんじゃないかと感じる。
正直、中務さんが家で襲われるシーンとか佐野さんの自販機のシーンとか、そのまま行方不明になってたら…と思わないでも無い。
あそこで、ビビらせるだけで逃がしちゃう(逃げ切れちゃう)程度の怪異だと認識できてしまうのホラー的にはあまり良くないかもと感じた。
そのせいで、怪異のルールやら危険度がイマイチ不明瞭になっているのも恐怖感を下げていたように思う。

リング的な、時間経過の演出がイマイチ効いていなかったのも気になった。
怪異の緊急性や危機感が時間制限と結びついて初めてあの演出が効果的になっていたのであって、マキタスポーツの収入とかGENERATIONSのスケジュールどうこうで3日以内に解決しなきゃいけない、はあまりにもストーリーとしての求心力が弱すぎる。
もはや意味がなかったと言わざるを得ない。

いろいろ文句を言ったが、あくまでGENERATIONSとそのファンの方々のための映画なので、タレントさんに映画の尺を割くべき作品であって、ホラーとしての出来を求めるのは筋違いであるというのも理解している。
ただ、ホラーとして結構出来が良い部分が多かったので、ホラー好きとしては詰めの甘さが気になってしまった。
叶うのなら、ホラー全振り、タレントさんの尺無視のミンナのウタを観てみたい。
Kitty

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