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ミンナのウタのカポERRORのレビュー・感想・評価

ミンナのウタ(2023年製作の映画)
3.8
Jホラー界の眠れる獅子 清水崇監督…ストロングスタイル復活!!!

昨年、私がホラー作品で劇場に足を運んだのが『ヴァチカンのエクソシスト』と『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』の2作品だったのだが…本作をスルーしてしまったのが悔やまれる。
劇場であのラストの戦慄…いや旋律を味わいたかった。
ブラボー!
マーベラス!
村シリーズ島シリーズで迷走(?)気味だった巨匠 清水崇監督が世に放った本作は、正にJホラーの王道を行く傑作だった。

正直、前半の不穏な仕掛けの数々は、さなの家訪問シーン(例のループシーン)をはじめ、期待しすぎて肩透かしを食らってしまった部分もあるのだが…後半、さなの過去を探るあたりからの怒涛の展開が実に素晴らしかった。

まず私が中盤、おおっ!となったきっかけは…またしても我が熟女センサーの発動である。
そう、さなの通っていた中学の現校長…さなが中学3年当時担任だった川松!
彼女の登場で私の目の色が変わった。
演じたのは劇団青年座の今井あずさ。
私と同い年のマキタスポーツより更に歳上の彼女が、あろう事か30年前のさなの担任教師役をも演じているのだ。
57歳が27歳を演じる?よもや逆エスターか!?
(それを言ったらマキタスポーツが45歳の役というのも大いにツッコミどころだが。)
しかし、地味度MAXな彼女のオドオドした所作や恐怖に慄く表情が実に味わい深く、私的にどストライクだったのである。
彼女が、自販機の下に入り込んださなのノートをまさぐるシーンで、私は後ろからカンチョウをお見舞いしたい衝動を抑えるので必死だった。
やはり、映画は脇を固める演者(ジュクジョ)の魅力が、作品の出来を左右する重要なファクターなのである。
へ?
さなの母親では、そのセンサー反応しなかったのかって?
さなの母親役の山川真里果は未だ40歳…反応するわけがなかろう。
それでも、作中の布団のシーンは呪怨を彷彿とさせる屈指の名シーンだったので、彼女にも惜しみなく拍手を贈りたい。

そうそう、GENERATIONSの兄ちゃん達の怖がりっぷりも予想以上に良かった。
何故か霊感強そうなキャラまでいて、何気に設定がしっかりと作り込まれている点も好感が持てた。
そんな彼らの中でも、メンディーの図体とビビリ度のギャップたるや…私がファンならば昇天していたかもしれない。
(残念ながら私は…ない!)

そして、本作の肝とも言えるヴィラン ”さな”の造形…これが実に見事ではないか。
彼女の過去を掘り下げれば掘り下げる程、その容赦のないサイコパスっぷりが暴かれ、観る者に絶望を植え付けていくのだ。
自らの魂の声でミンナのウタを完成させるなんて発想…もはやガンギマリで最高としか言いようがない。
私は、久方ぶりの恐怖のヒロイン爆誕に酔いしれつつも、心の中で「お願いだから、プロ野球の始球式や、故郷のキャンペーンアプリとかで小銭稼ぐような真似だけはしないでね」とただただ祈るのだった。

清水崇監督は現在公開中の話題作『みなに幸あれ』で制作も手掛けているとのこと。
まだまだこれからもJホラーを牽引しつつ、後進の輩出に一役買って貰いたいものである。
彼の描く本作圧巻のラストはエンドロール後…未見の方は最後の最後まで刮目せよ!
『ミンナのウタ』は現在U-NEXT、TSUTAYAでレンタル中。
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