マヒロ

瞳の奥の秘密のマヒロのレビュー・感想・評価

瞳の奥の秘密(2009年製作の映画)
3.0
裁判所の捜査員であるベンハミンは、自身が25年前に解決した若い新婚の女性が惨殺される事件が忘れられず、それをモチーフに小説を書こうとしていた。既に終わったと思われる事件だったが、執筆にあたって記憶を辿っていくうちに不可解な点が見つかっていき……というお話。

過去と現在の時間軸を交差させながら、犯人の逮捕だけに終わらない一つの事件の本当の顛末を暴いていくという流れだが、最初はメインと思えるサスペンス部分は映画を進めるための添え物に過ぎず、本質は長い時間が経っても消えない愛の物語である…ということがだんだん分かってくる。
割とサスペンス部分は緩めなので序盤はちょっとイマイチだったんだけど、核となる部分が明らかになるにつれて面白くなってくる。
イカツイ風貌だが割りかしナイーブで純情オヤジなベンハミンと、彼の年下の上司であり、サッパリとしているが決めるところは決めるキビキビしたイレーネのコンビの、一見すると分からない性格のギャップが良かった。

気になるのはやっぱりサスペンス部分のおざなりな感じで、犯人が誰か?とかなぜ殺した?という部分に関してはほとんど深みが無く、見たまま・思うままのものしか出てこないので求心力がない。事件が引っ張られるのもベンハミン達がヘマをやらかすからでしかなく、ここが芯というわけではないのは分かるが、この後に続いていく出来事も考えるともうちょっと事件についてもガッツリ描いて欲しかったかな。
ベンハミンの同僚であるパブロという男についても描写不足な感じで、ひょうきんもので酒好きなくらいしか情報がないので、彼が下すある決断についてもあんまり説得力がない。

一見普通のサスペンスに見せかけて……という二重構造は好きなんだけど、もうちょっとサスペンス部分の物語的強度が高かったら良かったかなと思った。

(2021.3)
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