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瞳の奥の秘密のKSatのレビュー・感想・評価

瞳の奥の秘密(2009年製作の映画)
4.2
軍事政権時代と2000年代それぞれのアルゼンチンを舞台にしたミステリー、といえば良いのだろうか。

基本的にはかつて起こった未解決事件を追及する物語であり、口当たりはミステリーなのだが、切ないロマンスとしての要素もあり、ひと言では言い表せない複雑な魅力をもつ映画だった。

アルゼンチンの司法制度(なぜか警察組織の刑事ではなく、裁判所付きの裁判官が事件の捜査を行う)や社会構造(1970年代という時代において、中年手前の男性より若い女性の方が上司になっている。これは人種の問題や出自の問題?)など、何も知らずに見るとちょっと戸惑うけど、発見も多かった。

やがて、少しずつ明らかになっていく各キャラクターの秘められた想いやそれによる行動が、なんというか、日本やハリウッドの映画ではちょっと出来ない感性で、、、復讐のやり方が、単に殺したりするのではなく非常に独特で、これがまた何ともいえないものを心に残してゆく。

そして、そこからいかにかつてのアルゼンチンという国が腐っていたかという告発にも繋がりつつ、今を生きる彼らの希望も感じさせるあたり、本当に上手いと思った。アカデミー賞も納得。

撮影面でも物凄い。冒頭の駅の情景も、何だか見たことない、夢現な表現だった。

特筆すべきは、サッカー場での捜査の場面。さすがはマラドーナとメッシの国・アルゼンチン。サッカー場の使い方が上手い上手い!とんでもない超絶技巧的な長回しのワンシーンワンカット。これには、同郷のギャスパー・ノエもビックリです。
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