不倫をかさねる人妻、その夫と恋人をえがくシンプルな一本。
なんのことはないありふれたプロットが、ゴダールの手にかかるとおしゃれで乾いた映像になるのが面白い。
「セリフのように」リアリティに欠ける観念的な言葉。
突如として挿入される映像とコラージュと言葉遊び。
章番号をあたえられた断片。
格調高さを擬態するベートーヴェンの音楽。
あられもなく語られる政治性。
その後のゴダールのスタイルのひとつが、ここで完成されている。
女の身体を「記号」と化し、愛を意味の剥がれ落ちた言葉の構築物とするその手管はさすがのひとこと。
ほして、終盤に恋人とのあいだでかわされる愛についての対話は、フィクションにたいしての本質的な言及でもある。