オルメモが15年分の「想い出」の映画だったとしたら、今作は1つの答えに留まらない、沢山の含みや定義付けた「プリキュア」という固有名詞の意味を70分問い続けたような映画だった。
プリキュア映画の従来のフォーマットを用いつつも、終始フワフワした夢見心地な雰囲気と、起こってる事の重大さを壮大なスケールと映像で語ってくる、色んな意味で「今迄にないプリキュア映画」を何処まで作れるのかという挑戦の趣も強く感じる。
後半10年間バージョンのオールスターズDX的クロスオーバーを楽しむ前半〜中盤。どんな技も通用せず、全てのプリキュアが敗れ去る苦しい展開が明かされる後半。
強大な理不尽が何処までも立ちはだかってきたとしても、「諦めない」を体現し続ける心がこの20年間を"繋いで"きた事を証明するようなクライマックス。
過去20年間の数多のエピソードを走馬灯のように語り、そのどの要素も間違いなくプリキュアなんだ、と語りかけてくる。
勿論、正直言うとこれだけ長く続き増えてきたキャラクター達を全員丁寧にこの尺で扱うのは不可能であって、それへの挑戦と限界も見えてしまったクライマックスという印象は拭えない。
前半から登場してたレギュラーと、歴代主人公達以外の要素を拾えてたものは決して多くはなかった。
田中監督はHUGのオールスター回があったからこそ、今回が出来たと雑誌で語っていたが、あの時より見せ方に苦心してるのが画面を通してきて伝わってしまったという難しさは感じもした。
それでも、個人的には前回のアニバーサリーの時は主人公だったキュアエール/野乃はなのお陰でプリキュアのヲタクになったので、彼女がプーカを応援し、プーカがプリキュアに覚醒するシーンが1番良かったと思った。
彼女が常々語ってた「何でも出来る、何でもなれる」はHUGプリの放送が終わったとしても、後続の作品も、何ならHUG以前の作品もずっと唱え続けてきた事を証明するかのように出てくるキュアモフルンや、お子様ランチドレスのコメコメ等の文脈を踏まえてるのが、よりそのシーンの感動度を後押ししている。
無機質で純粋悪のような存在のプリムと同じ力を持った存在だとしても、その力を壊す為に使うのではなく、大切なものを守る為に、そしてその先に誰かを(プリムさえも)愛して手と手を繋いでいく。
オルメモとは違ったアプローチで、20年の集大成という方向性の映画が出来る公式の腕っぷしを感じた映画。
プリキュアというコンテンツに込められた願いや祈りが、1人でも多くの人に届いて欲しいな、という優しい気持ちになれるような映画でした。