えるどら

映画プリキュアオールスターズFのえるどらのレビュー・感想・評価

5.0
20年目の集大成。シリーズ最高傑作。

「プリキュアとは何か」をテーマにした20周年作品。
Go!プリンセスプリキュア(Goプリ)の監督・脚本コンビがその命題に挑む。

「プリキュアとは何か」を問うその向こうに「プリキュアは何のために拳を振るうのか」という問いも見えた気がした。
Goプリはシリーズでも特に戦闘シーンに力を入れた作品だ。
そんなGoプリを作り上げたスタッフがプリキュアの力の使い方・プリキュアの力とは何かを突き詰めた結果の映画なんだと思った。

プリキュアとて殴れば暴力。
ならば力が強いということがプリキュアの力なのか?
そうして生まれたのが、至高のプリキュア「キュアシュプリーム」である。
それに対し、プリキュアの力の源は何かを反論する。
プリキュアの力とは、手を繋ぎ立ち上がる力。
弱くても、何度負けようと諦めない力。
仲間を守る力である、と突き付ける映画だった。

これまでも幾度と無く表現されてきたこの事実を、この映画は改めて真っすぐに表現した。
”力”に焦点を当て、本筋として描いた。
戦う少女としてのプリキュアを再認識し、再解釈するための物語に感動した。

無駄な導入も無く、テンポよく話が進み、話の軸を通しつつキリの良いところでしっかり〆る。
開始数分で主人公を変身させる構成も見事。
お手本のようなヒーロークロスオーバー映画じゃないだろうか。
ぜひ子供たちの意見が聞いてみたい。

シリーズ20年目の節目に相応しい、素晴らしい映画だった。

余談。
過去シリーズの名シーンを回想するシーンは涙なしには見られなかった。
全シリーズを追っているわけではないが、思い入れの強い作品はいくつもあるから。
私は特にGoプリがお気に入りなので、40話付近の「子供の自分に夢を見てくれてありがとうという回」がピックしてあって涙腺が決壊した。
さすが本家本元、Goプリの監督脚本コンビだけあって、はるかの扱いが上手い。
単発の見せ場も作ってあって大感謝だった。
もう2023年なのにありがとう……。

ここ数年シリーズを離れていたので詳しく知らないキャラも少なくないのだが、キャラクターの作品への落とし込みや言動からすぐにそのキャラのことを理解できるのは制作陣の手腕を感じる。
特にスカイチームの主人公ズのまとまりが良く、この映画のために主人公が作られたのかと思うほど面白かった。
主人公の属性・雰囲気って被らないもんなんだなぁと感心した。
中でも夏海まなつという女、物語を前に引っ張る力が強く、どこにいても常に話の中心に入り込めるお手本のような主人公で、とても気になった。
気になりすぎてさっそくトロピカルージュを見始めてしまった。
夏海まなつ、マインドフルネスを信条に掲げる最高のキャラクターだ…。

「プリキュアに憧れた子を悪者のまま終わらせないで欲しい」という鷲尾Pの言葉の通り、ラストはプリキュアになったプリムのエンドも美しい。
プーカと一緒に”ふたりはプリキュア”になった。
完全な存在のシュプリームが分離して不完全な存在になり、2人だったからプリキュアになれる、というオチは神が人間になって夢を叶えたようで綺麗な終わりだなと思った。

総じても、不満点が全然見当たらないうえに良かったところは語り尽くせないほど多い。
映画館でもう1回ほどは見られるだろうか。
最高の映画をありがとう。
プリキュアシリーズがこれからも末永く続いていきますように。
えるどら

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