ストレンジラヴ

SISU/シス 不死身の男のストレンジラヴのレビュー・感想・評価

SISU/シス 不死身の男(2022年製作の映画)
3.8
「肝心なのは強いことじゃない、あきらめないこと」

第二次世界大戦末期、フィンランドで金塊を掘り当てた老人アアタミ・コルピと愛犬ウッコは道中でナチスの部隊に目を付けられる。だが彼こそがかつてロシア人に家族を殺され、その復讐に300人以上ものソ連兵を倒した"フィンランド軍特殊部隊最強の男"だった。
"シス"…それは翻訳不能のフィンランド語。ニュアンスとしては「あきらめないこと、粘り強いこと」をさし、フィンランドでは「絶望の淵に立たされたときシスが体現する」という。
このジイさん、とにかく色々とおかしい。地雷を踏んでも痛がるだけ、火だるまになっても平然とし、挙句ツルハシだけで飛行機にぶら下がる始末。そして怪我をしても常人離れした生命力と謎の応急処置によってすぐ動けるようになってしまう。そのくせしてめちゃめちゃ可愛い犬を連れている。
西部劇ではないものの、かつてイタリアがマカロニウエスタンを生み出したように、北欧がウエスタンのようなものをやるとこういう作品が出来上がるらしい。劇中コルピは呻く以外ほとんど言葉を発することなく淡々とナチスを仕留め続ける。ウィットに富んだ言い回しでカカシを始末するシュワルツェネッガーのような陽気さはそこにはない。純粋なる怒りと生への執着だけがそこにはある。
ドイツ軍の戦車が非常に現代的だったのは「うーん...」だったが、上映時間91分とまとまりもよく頭を空っぽにして観られた。たまにはこういうのもいい。