ノラネコの呑んで観るシネマ

30Sのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

30S(2023年製作の映画)
4.3
全員誕生日が10月31日の小野匠、財田ありさ、真田佑馬の仲良し男女三人組。
20歳の誕生日をお互いに祝った彼らは、10年後に向けてある約束をする。
そして30歳の誕生日を迎える数日前、真田佑馬が突然失踪したという連絡が、存在を知らされていなかった彼の“妹”から入る。
映画は、新田桃子演じる“妹”が、ある事情から兄の行方を探すミステリタッチの捜索劇を縦軸に、間もなく約束の日を迎える小野匠と財田ありさの、かつての理想と今の現実を巡る葛藤を横軸に展開する。
何者にでもなれると思っていた10年前と、その頃夢見た自分になれていない今。
一人は結婚を控えて順風満帆だが、かつての夢をあきらめている。
一人は酒に溺れて、自暴自棄な生活を送っている。
青春の終わりを前に、このまま30歳になってしまっていいのか?という二人の内面への問いが、失踪した親友というマクガフィンによって顕在化するという構造。
キャラクターの抱える問題は普遍的なもので、感情移入しやすく出来ていて、この世代はもちろんだが、幅広い世代の人に刺さりそう。
私もこのぐらいの歳の時にアル中になりかけたので、あの辛さは分かる。
飄々とした雰囲気の新田桃子がとてもいい。