田山信行

釜石ラーメン物語の田山信行のレビュー・感想・評価

釜石ラーメン物語(2022年製作の映画)
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物凄くベタな昭和の人情喜劇。
不良娘である主人公がフラッと実家に3年振りに帰ってくる導入、また登場人物たちは己の気持ちを隠すことなく思い切り本気でぶつけ合う。病院での病状聞き間違えコントなんてのも。これでもかとベタなんだけど。だがベタが悪いっていうんじゃない。

劇中でも「人情・根性」なんてもう古臭いという台詞があるが。しかし古臭いものだと一蹴してしまっていいものだろうか。今の時代的には家族愛だとかストレートには響かないのかもだが、でもそういう人情ってのはどの時代だって変わらずにあっていい普遍的な価値観だろうと。

あと元来、日本人の気質的に普通なかなか感情曝け出して本音をぶつけ合うことなんてことしないけども、でもそれは物語の上のファンタジーだとしてあってもいいだろう。渾身の芝居のぶつかり合いというカタルシスもあるし。

貧困だとかヘビーな面持ちの家族再生もしくは崩壊みたいなもんばっかり見せられても、ね。今の人の繋がりが希薄な現在においても普遍的な幸せな家族像は必ずあるだろう。そして忘れ得ぬ東日本大震災。それを突如奪われた人だっている。

もはや10年以上経ち世間的には薄れゆく記憶だが、被災した方々にとって、大事な人を亡くした人にとっては未だに忘れ得ぬ記憶だろう。そうした人たちに少しでも創作が寄り添うことが出来たら。記憶に留めて置く為にも。作られた意義がある、はず。


私の推しである井桁弘恵ちゃん。早稲田卒の才女で、女優業のみならずバラエティに今やおしゃれクリップのMCまで務める活躍っぷりであるが意外やコレが映画初主演。ブレイクしてると思ってもやはりなかなかそう主演ってのはまぁ簡単じゃないものか。

本人の性格とは裏腹に何げにSっ気強めの役がハマるのではと思っていたので良いハマりっぷりでした。田舎の小さなラーメン屋の娘で過去ヤンキーというこれまた昭和な人物像で。本人の性格はこんなに無茶苦茶ではないだろうけど、地というか似た芯の強さみたいなものを持っているのかも。

そして『17歳は止まらない』に続いて池田朱那さん。この子本当、芝居も存在感も抜群すぎる。今後頭角を現していく若手の1人だろう。川を挟んでの2人の掛け合いが良かったな。そこまでわざと芝居を大仰にすることで高まっていく感情の気持ち良さがらあったし2人もよく応えたと思う。あ、そいや“なかよし”って凄く特殊な名前だなぁ。

エンドロールまできっちりと釜石の地をカメラで捉えるのが心地良い。いまいち映画が産業づきまではしない日本では地方創生映画なんてのも眉唾なとこはあるんだけど。
田山信行

田山信行