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カンダハル 突破せよのMrOwlのレビュー・感想・評価

カンダハル 突破せよ(2023年製作の映画)
4.0
イラン国内に潜入中のCIA工作員トム・ハリス(ジェラルド・バトラー)は、核開発施設の破壊工作に成功します。その後別の任務に就くのですが、CIAの内部告発により機密情報が漏洩し、工作員であることが敵対するイランにバレ、ターゲットになってしまいます。任務を中止し、30時間後に離陸する別任務を完遂し、離脱予定の英国SAS連隊の飛行機に合流するため、アフガニスタン南部のカンダハルにあるCIA基地を目指します。ターゲットとなったトムは別任務に半ば騙される形で参加させられた通訳のモーとともに敵の襲撃をかわしながら基地を目指します。脱出アクション、バディものの要素も盛り込まれながらイランの精鋭コッズ部隊に追われながら、イランを出し抜いて利用価値のあるトムを拉致しようするパキスタン情報局ISIの工作員も現地の部隊を使いながら襲撃してきますので、かなり難しい脱出劇になっています。夜間の暗視ゴーグルの見た目での戦闘シーンは新鮮でした。
本作の監督であるリック・ローマン・ウォー監督は1980年~1990年代にかけて、スタントマンとして働き、『ユニバーサル・ソルジャー』や『ラスト・オブ・モヒカン』、『ラスト・アクション・ヒーロー』、『ハード・ターゲット』、『クロウ/飛翔伝説』、『60セカンズ』、『リーサル・ウェポン2/炎の約束』、『デイズ・オブ・サンダー』、『ザ・ワン』といった作品に出演した経歴を持っています。近年の監督作品ではブラッド・スローン(2017年)、エンド・オブ・ステイツ(2019年)
グリーンランド -地球最後の2日間-(2020年)があります。エンド・オブ・ステイツ、グリーンランド、-地球最後の2日間-でジェラルド・バトラーとタッグを組んでいます。主演のジェラルド・バトラーはエンド・オブ・ホワイトハウス、エンド・オブ・キングダム、エンド・オブ・ステイツ、そしてグリーンランドなど、アメリカ人を演じることが割と多いですが、出身はスコットランド、グラスゴー大学で法律を学び、最優秀の成績で卒業。エリザベス女王のマネージメントを扱う弁護士事務所に就職するなど、学業もできるんですよね。300をはじめ、エンド・オブ・ホワイトハウスシリーズ、ザ・アウトロー、炎のデス・ポリスなど強面でいかついガタイを活かしたアクション俳優のイメージが強いものの、バニシング、オペラ座の怪人など演技派俳優の実力も備えています。本作もCIAなので米国人役、かと思いきや、「ロンドン」に向かう、と。どうやらMI6とも関わりがありそうです。また本作は2016年6月、元軍情報部要員のMitchell LaFortuneが、自らが執筆したオリジナル脚本『Burn Run』をサンダー・ロード・フィルムズに売却した。『Burn Run』は、アメリカ国防情報局で働いていた彼が、スノーデンのリーク事件(英語版)のあった2013年にアフガニスタンに派遣されていた経験を基にしているとのことで舞台は2013年ころ、今から10年ほど前のアフガニスタンと想像されます。以下は歴史的補足情報ですが、カンダハルはアフガニスタンの最大民族パシュトゥーン人の居住地域にあり、パキスタンのペシャーワルと並ぶパシュトゥーン人の主要都市。東はカブール、西はイラン、南はパキスタン領バローチスタンのクエッタに通じておりインダス川下流域の大平原からインド亜大陸へと通ずる交通の要衝で、国際空港もある都市です。2001年のアメリカのアフガニスタン侵攻では10月からペルシア湾に展開するアメリカ海軍の艦艇から巡航ミサイルの攻撃を受けています。北部同盟(反タリバン)の大攻勢で首都カーブルが失われた後もカンダハールはタリバン側の最後の拠点となり、12月6日の明け渡しまで激しい攻防戦が繰り広げられた、という激戦の地でもあります。タリバンの撤退後、タリバンの残党による小規模な武力集団が周辺地域に広く展開。タリバンに代わって、かつて同地域を支配したグル・アーガー・シェールザイーがカンダハール州を掌握し、タリバンの台頭を許した腐敗の温床が再現されることが懸念されたものの、アメリカに支援を受けた政権が長らくカンダハール市を完全に掌握していました(2021年のアメリカ軍撤退まで)。そうした重要な都市であるカンダハルが、本作の舞台です。
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