ぶみ

カンダハル 突破せよのぶみのレビュー・感想・評価

カンダハル 突破せよ(2023年製作の映画)
3.5
タイムリミットは30時間、400マイル先の救出地点を目指せ。

リック・ローマン・ウォー監督、ジェラルド・バトラー主演による実話をベースとしたアクション。
イラン国内で、核開発施設の破壊工作に成功したCIA工作員が、正体を明かされてしまったことから、中東から脱出するため、アフガニスタン南部のカンダハルにあるCIA基地を目指す姿を描く。
主人公となるCIA工作員トム・ハリスをバトラー、彼と行動をともにすることとなる通訳をナヴィド・ネガーバンが演じているほか、アリ・ファザル、トラヴィス・フィメル等が登場。
物語は、冒頭ハリスがネットワーク会社の社員に扮してケーブルに仕掛けを施し、核開発施設が爆発を起こすという衝撃のシーンでスタート。
その後、CIAの内部告発による情報漏洩により、事件の張本人として正体が明かされてしまったことから、30時間後にCIA基地から離陸する飛行機に搭乗するため、カンダハルを目指す様が描かれることとなるのだが、当然、一筋縄にはいかず、イランの部隊や、パキスタン軍統合情報局、はたまたタリバンの息がかかったゲリラや武装集団と、様々な手から追われる身となり、登場人物も多いことから、途中、これは一体誰だっけ?となること数回。
同行することとなる通訳も、複雑な背景を抱えているため、前述のような敵と相対することに加え、単純なバディものに終わらない通訳とのやりとりも見どころの一つ。
また、序盤にハリス等が乗り込むクルマがトヨタ・ハイエースだったことを筆頭に、数多くの日本車が登場していたのも見逃せないポイントであるとともに、中盤にある暗視ゴーグルを装着してのバトルは、ゲームっぽい面白さがあり、エンタメ度を高めているところである反面、映像が暗いので、配信等によりタブレットや小さなテレビで観ると、何が起きているのか、さっぱりわからなくなること必至。
何より、脚本を担当したミッチェル・ラフォーチュンは、アメリカ国防情報局に勤務したことがあり、2013年当時、アフガニスタンに派遣されていた経験をベースとして執筆したとのことであるため、どこからがフィクションかは定かではないが、現場の空気の再現はなかなかのものではないだろうか。
前述のように、登場人物が多く、組織も複雑であるため、ゴチャゴチャしている印象は拭えないものの、描かれていることはハリスが時間内にカンダハルに向かうというシンプルな設定であるため、深く考えずとも楽しめる仕上がりになっているとともに、奇しくも、その前に観た韓国製作のイム・スルレ監督『極限境界線 救出までの18日間』でも、実話ベースとしてタリバンやアフガニスタンを扱っていたことから、違う視点で当時の雰囲気や世界情勢を味わうことができた一作。

現代の戦争に勝利はない。
ぶみ

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