このレビューはネタバレを含みます
大阪アジアン映画祭にて。
すばらしかった。ぜひ公開してたくさんの人たちに観てほしい。
香港映画。と聞いてイメージするのはどんな情景でしょうか。雑多、猥雑な街、ノワール、はたまたウォン・カーウァイ的色味のスタイリッシュ…
本作はとにかく、穏やかで美しく、しかし物語は、報酬を得るため(だけではない理由が妻にはあるのだが)里親となって、養子縁組が叶うまでのあいだその子供を預かるある夫婦と、次々とやってきては去っていく里子(さとご)たちとの、愛らしく切ない関係が展開していく。
泣かせようとするような演出ナシに、いつのまにか彼ら夫婦の気持ちにシンクロしていくような、風景、室内の断片が、本当にすてき。
カー・シンフォン監督と、夫役のアラン・ロクさんが上映後にティーチイン。
印象に残った質疑を。
《質問》エンドクレジットを見ていて、編集ほか、ウォン・カーウァイ組の人たちが参加していて驚いた。(*ネタバレ的になるかもなので詳しくは書きませんが)ある手法にぐっときたが、それは監督自身のアイデアか、ベテランからのアドバイスか?(という主旨の質問)
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監督いわく、上下関係なくチームとして今作に向かったが、ベテランは私と雑談しながら、私の好みや傾向をつかみとり、編集時に反映してくれていた、と。よい関係性のなかで映画作りがなされたのが感じられ、うむ、それは愛溢れる作品の手触りにあらわれている、と思いました。
《質問》
何度も何度も香港には行っていて、香港映画を見ると、あの場所だな、とほとんどが分かるのだが、本作はまったくロケ地が分からず、こんな景色があったのかと驚く場面ばかりで衝撃だった。どうやってロケ場所を選んだのでしょうか?
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この方はもうひとつ質問して、監督はそちらに丁寧に答えたためか、ロケ地選びについての答えがなく、残念だった。
しかし、こういう香港通を自認する方が驚愕したというほど、新しい街並みや自然の山々などが登場しているのです。
アランさんが「流水落花」というタイトルを思いながら観てほしい、と上映前の舞台挨拶で仰ってました。ほんと沁みました。
本来は「落花流水」という熟語だそうで、コテンパンに負けるという意味らしいです。それを逆にしてる、その思い、とは。
新人監督発掘プロジェクト、みたいな、
「首部劇情電影計劃(オリジナル処女作支援プログラム)」の2019年入選作、とのこと。
シンフォン監督は、頭良さそうな、上品で黒い服や足もとまでがおしゃれな雰囲気。質疑応答は大好き、いろいろ聞いてほしい、と。受け答えもとても丁寧で、明確。今後も注目していきたいです。
【追記】
私、香港エンタメ事情はあまりよく分からないのですが、本作に、香港アイドルMirrorというグループのマネジャー女性が役者として出演しています。(質疑応答で〇〇のマネジャーが…と質問があったのだが、誰の?と思い調べたら分かりました)
なぜ彼女をキャスティングしたのですか?という質問に、監督いわく
「だって、その役まんまでしょ?」と。会場内は笑いに溢れました。ほんと、はまり役なのです。