ノラネコの呑んで観るシネマ

古の王子と3つの花のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

古の王子と3つの花(2022年製作の映画)
4.3
ミッシェル・オスロが描く、王子と王女の三つの恋物語。
一つ目の「ファラオ」は、古代スーダンの王女との結婚の条件が「エジプトのファラオ」になることと言われた小国の王子が、神の加護と人望を武器に恋を成就させるためにエジプトを征服する。
二つ目の「美しき野生児」は、冷酷な父によって領主屋敷を追われた中世フランスの王子が主人公。
やがて彼は逞しく成長し義賊となり、かつて父によって幽閉されていた伯爵の娘の心を射止める、因果応報の物語。
三つ目の「バラの王女と揚げ菓子の王子」は、クーデターで流浪の身となった小国の王子が、18世紀トルコの宮廷御用達の揚げ菓子屋となって、自由になりたいと願っているバラの姫と禁断の恋をする。
どの話も王子が苦難の道を行き、最終的に王女と結ばれるという大枠は同じ。
ビジュアルは、オスロらしいフラットデザインが基本ながら、古代エジプトの話は遺跡の壁画が動き出したようなスタイル、中世フランスの話は日本人には藤城清治を思わせる影画調、近代トルコの話は立体感を強調したものと差別化し、相変わらず凝っている。
昔話の話型の短編オムニバスなので、さほど捻った作りではないが、基本的には若者が恋を成就させる冒険の過程で、それぞれの時代の「当たり前」を崩してゆく物語であり、共感性は高い。
一編がだいたい25分程度で、ゆるりとオスロの美学を堪能出来る。