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碁盤斬りのmasatのレビュー・感想・評価

碁盤斬り(2024年製作の映画)
3.5
想像以上に凄かった。
何がすごいって、
暗い!暗い!
画が暗い!
草彅が異様に暗い!

この “翳り” の中に、
光る眼、光が射す肌の艶・・・
この“翳り”が、
久々に、いやあ、ホント久しぶりに“映画”を、陰影と奥行きに富んだ映画を心から、身体の底から、体感できました。

見事なスコープサイズに切り取られた、ストイックな俳優たちの躍動!
あの顔、顔。そして品のあるヴァイオレンス。興奮したなあ。
(撮照が、詰まらないホラー連続の鬱憤を発散しているかの様だ!)

また、単なる市井と浪人の話を超え、
白石作品らしく、
武士、武家、“体制”を肯定していないのがイイ。決して格好良くない。(けど、カッコいいのが映画ですなあ)
前半の日常が淡々と進んでいく、その日常を堂々とした余裕を持って、飽きさせないのも凄く、すべては、
物語、光、ショット、繋ぎ(!)、コンダクターとしての演出がモノを言っている。

首を斬り、碁盤を斬る、そんなクライマックスもイイ。

四角四面で融通が効かないが為に、実は不幸を振り撒く草彅の翳りが見どころなのはいうまでも無く、今の社会が実は“曖昧で気持ち悪い”という事をも体現しているのが圧倒的。
対照的に、実は、武家と社会の矛盾を主人公以上に体感していたかの様な“哀しみ”を放つ斎藤工も、流石の名優ぶり。
将棋の次は碁の清原がますます巧くなっていて、盤上の闘い、ストイックな世界に相応しい。また、ホンモノのバイプレイヤー、中村優子のワンカットの凄み、そして、いつになく大役の奥野瑛太の面白さが発揮されている。
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