パイルD3

碁盤斬りのパイルD3のレビュー・感想・評価

碁盤斬り(2024年製作の映画)
4.5
時代劇のソウルが不滅であることを、今一度再現して見せた武士道と情けの在り方を描く一級品

これは今年観ておいて間違いのない一本

奇妙なタイトルながら、白石和彌監督作品で、主演は高い演技力を見せる草彅剛と輝きを放ち続ける清原果耶
最早、自ずと熱くなる3人の合体とくれば観ないわけにはいかないので、ちょっと浮かれた軽い気持ちで映画館へ

…そしたら、ビンタを喰らった!
それも筋立ての面白さと完成度の往復ビンタ
途中からは完全に心が正座モードでスクリーンに見入っていた


【碁盤斬り】

江戸で長屋暮らしをするワケアリの父親(草彅剛)とその娘(清原果耶)をめぐるいわれなき冤罪に、人として、武士として真正面から立ち向かう堅物侍の物語
浪人が囲碁の名手というところが新手で、ドラマの大きな焦点でもある

元は落語の演目に登場する武士、柳田格之進の仇討咄から材を得ているようだ

《市井に生きる武士》
映画「たそがれ清兵衛」が道筋を作った藤沢周平の小説世界にあるような、つましく市井に生きる者の人情劇に、鍛え抜いた武士の持つ研ぎ澄まされた魂を丁寧に織り込んで行き、怨讐の果ての避けられない対決に至るという流れをスリリングなストーリーとして再現している

《白石監督の画作りの巧妙さ》
蝋燭の揺れる灯り、光彩の妙、赤を強調した色感、碁石の接写、人物の顔をあおりで撮るショット、俳優陣のあらゆる表情を引き出して画にするワザ…等々

どれも白石監督らしさと撮影へのこだわりがあふれているが、どうしても「狐狼の血」が先入観でチラついていたので、情趣深い武士道の一端がここまで魅力的に描かれているとは思わず、予想以上に感動させられた
こちらにしてみれば、最高に喜ばしい裏切りでもある

決闘シーンはもちろん白石監督の真骨頂でもある攻撃力の高い至芸が炸裂する

何よりも、時代劇にもまだまだ未開地があることを感じさせた作品

《キャスト》
白石監督の人物の描き分けはどの作品でも超一流で、ここでも小泉今日子、中川大志、斎藤工、音尾琢真、市村正親…俳優陣は全員いい
とりわけ、囲碁を打てる萬屋の大旦那役の國村隼が、近年では善人寄りのおそらく最高の役どころを得て魅力全開、好印象を残す
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