ひのらんげ

碁盤斬りのひのらんげのレビュー・感想・評価

碁盤斬り(2024年製作の映画)
4.0
「おい!國村隼!!何やってんだよ!バカ―!マジで!!マジで!!」

武士の誇りとして清廉潔白を信条とする「柳田」は、かつて彦根藩に地位ある立場で仕えていて、また、碁打ちとしてもその腕は相当のものであり、忖度なく実直に相手を負かす。その融通の利かない徹底ぶりから煙たがられる。
柳田は、妻を亡くしたあと横領の冤罪により藩を抜けて江戸に下り、現在は娘「お絹」と二人暮らしの貧乏浪人である。碁打ちとして先生と呼ばれていたが、町の碁打ち場で素行の悪い金持ち商人「源兵衛」と対戦し、その後懇意となる。

ある日、柳田の横領の冤罪が晴れ、同時に妻の死の真相を知る。
犯人を知った柳田は、その復讐するために家を出るがその時、源兵衛の使いから声がかかる。
新たな横領事件巻き込まれる柳田。これまで清廉潔白を信条とする武士が不正の嫌疑を次々とかけられ、一時は切腹を決意するが。

柳田の命を懸けた戦い、お絹の気合が相乗し、物語は濃度を増す。

柳田は復讐を果たすのか。

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映画に引き込まれるあまり、逆に映画から気持ちが飛び出してしまって「おい!國村隼!!何やってんだよ!バカ―!マジで!!マジで!!」と思ってました。

キャストは豪華でしたが顔芸大会にならず、ストーリーはすっきり図太い。深くて長く感じる良い映画でした。

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信条に反することを強いられたとき、マインドがむき出しになると思う。まっとうでお日様に恥ずかしくない生き様は、武士だからだろうか。有り体に言えば”意地”なんだろうけども、その意地は職業や立場に依るということなのだろうか。立場がなくなった時の自分に対する意地はどこまで強度をもって耐えられるのか。
武士ってすごい。

そして、自分の(正しいと思っている)行いによって苦しめられる他者がいて、それでも自らの正当性を主張すべきかどうか。柳田は死ぬよりつらい岐路に立つ。つらいなぁ。

不正と融通の混同または思考停止、約束を常に不可逆であり遡及も認めないというのは、構造としては単純だけど、これ、もうロボットなのでは。武士=ロボット説。
最近のAIが忖度とか顔色とか伺えるようになったことを思うと、時代は繰り返すっていうのが不思議に説得力を増す。

他人からどう見られるかではなく、信条によって潔く生きる姿は、かっこよくもあり、でも、もしも、近くにいたらめんどくさいだろうなぁとも思う(笑)
(エンジニア向きの映画かもしれないなぁ)

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久しぶりに良い映画を観た、という気持ちになりました。おすすめ。

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最後に、映画を閉じる、終わるというのはこんなにも難しいものなのか。と思う。
蛇足の恐怖。
ひのらんげ

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