シシオリシンシ

ヴァチカンのエクソシストのシシオリシンシのレビュー・感想・評価

ヴァチカンのエクソシスト(2023年製作の映画)
4.1
エクソシスト映画というジャンルにおいて「キャラ萌え」と「お仕事ムービー」の要素が特に強調されたフレッシュな映画になっている。

実在した主席祓魔師(チーフエクソシスト)ガブリエーレ・アモルト神父を主人公とした映画なのだが、この壮年神父のキャラがとにかく立っていて面白い。
優秀で作中きっての強い実力を持ったエクソシストだが、強面の彼がこぢんまりとしたスクーターで移動したり、ユーモアのある受け答えでイヤな上司の叱責をかわしたり、とも悪魔祓いとなれば天性の知力と勘で悪魔の正体を見極め相対するなど、軟派と硬派を絶妙な塩梅で織り混ぜたキャラクター造形の妙と、アモルト神父を演ずるラッセル・クロウの芝居にどうあっても惹かれてしまう。
ジャンルムービーの型を喰うほどのキャラ萌えの強さがこの作品の魅力であり観客に支持される点である。この跳ね方は近年では『RRR』でも見られた現象だ。キャラが萌えれば正義!という近年のトレンドを証明するに相応しい映画となっている。

また本作は祓魔師をお仕事ムービーとしてとらえている節もある。現場で悪魔祓いにあたる祓魔師以外にもヴァチカンにある巨大な書物室の文献を調べて支援する班や、悪魔の存在を信じない上層部一派など、世界観に深みを持たせる要素が多く描かれていたのもプラスポイント。実在した祓魔師をモチーフとしているだけに、こういうお仕事としての組織図や悪魔祓いの手順などが詳しく描かれているのは実在感が感じられてリアリティーがある。

ジャンルはホラーながら、キャラ萌えとお仕事ムービーで物語を引っ張り、終盤はアモルト神父の罪の克服と若造神父トマースの成長、そして死力を尽くして悪魔を祓うカタルシスに収束し、師弟バディ結成の爽やかなエンドで締めくくられる。

ホラーとしての面白さを期待するなら正直あまり恐くないので肩透かしをくらうだろうが、魅力的なキャラクターと実在感ある設定、罪の克服とキャラの成長を描いた燃えるストーリーが味わえる「ちゃんと面白い映画」なので、口コミ等で気になっている方には是非とも見ていただきたい良作ムービーだ。
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